3歳の長男と0歳の次男を育てる母親のAさん(30代)。ある朝、保育園へ行く準備をしていたところ、長男は「まだ遊ぶ」と言ってなかなか着替えようとしません。一方で次男も泣き始め、家事や仕事の準備も進まない状況でした。
何度声をかけても長男は動かず、時計を見ると家を出る時間は目前。焦りや疲れが重なったAさんは、思わず「もういい加減にして!」と大きな声を出してしまいました。長男は泣き出し、その姿を見たAさんはすぐに後悔します。
SNSでは「怒鳴らない育児」を推奨するような情報も多く、Aさんは子どもに対して怒鳴ってしまったことに対し不安を感じました。
では、Aさんのように怒鳴ることは子どもにどのような影響を与えるのでしょうか。また、怒らない工夫や対処法はあるのでしょうか。臨床心理士・公認心理師・保育士の鎌田怜那さんに聞きました。
■一度怒鳴ってしまったからといって親子関係が壊れてしまうわけではありません
-怒鳴ることは子どもにどのような影響を与えるのでしょうか?
大きな声で怒鳴られると、子どもは恐怖や不安を感じます。そうした経験が繰り返されると、「怒られないように行動する」ことが優先され、自分の気持ちを安心して表現しにくくなることもあります。
ただし、一度怒鳴ってしまったからといって、親子関係が壊れてしまうわけではありません。
むしろ大切なのは、その後の関わり方です。「大きな声を出してごめんね」「お母さんも焦っていたんだ」と伝えることで、子どもは人が失敗した後に関係を修復する方法を学びます。
親も感情を持つ一人の人間です。完璧に怒鳴らないことを目指すよりも、怒鳴ってしまった後にきちんと向き合うことの方が重要だと思います。
-感情が爆発する前にできる工夫や対処法があれば教えてください。
まずは「怒鳴らないように我慢する」のではなく、自分が怒りそうなサインに気付くことが大切です。
例えば、呼吸が浅くなる、声が強くなる、体に力が入るなど、人によって怒りの前兆があります。その段階で深呼吸をしたり、数秒その場を離れたりするだけでも感情の高ぶりを抑えやすくなります。
また、今回のAさんのケースのような3歳頃の子どもは、時間の見通しを立てることがまだできないのは当然です。ですので、何時に起きる、朝食を食べる、着替える、保育園へ行く準備をする、といった生活の流れをルーティン化していくことが大切です。ルーティンが定着するまでは大変ですが、長い目で成長を見守りながら生活習慣を整えていく視点を持つと、親自身の焦りも少し和らぐでしょう。
また、子どもがなかなか動かないときは、「あれ?今は何をする時間だっけ?」「上手に待てたね。そろそろ出発できそうかな?」など、“おとぼけ”を演じると、その場の緊張が和らぎ子どもも動きやすくなります。
そして何より、親自身が一人で頑張りすぎないことです。パートナーや家族、地域の支援などを頼りながら、自分の休息や気持ちを整える時間も大切にしてほしいと思います。
◆ 鎌田 怜那(かまだ・れいな) 臨床心理士/一般社団法人マミリア代表
臨床心理士・公認心理師・保育士・小学校教諭免許を持ち、児童養護施設でのトラウマケア、スクールカウンセラー、精神科クリニック、保健所での発達支援など多岐にわたる現場を経験。自身も3児の母として日々育児に向き合いながら、「知識だけでは乗り越えられない子育ての壁」を痛感してきた経験をもとに、子育て世代に寄り添うカウンセリング・講演・研修を展開。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)
























