5年に1度の国勢調査が今秋、全国一斉に行われる。福井県内でも市町が調査票の配布・回収などに当たる調査員の確保を進めているが、福井市内の自治会長から「調査員を推薦するよう連絡があったが集まらない」との訴えが、福井新聞の「ふくい特報班」(ふく特)に届いた。自治会の負担を減らそうと調査員の公募に力を入れる市町も増えているが、確保には苦心。地域の担い手確保自体が課題となっている中で「人頼みの調査は限界にきているのでは」との声も上がる。(福井新聞社)
加入世帯だけで660軒を超える福井市森田地区の上野本町自治会。今年初めて自治会長になった北嶋孝夫さん(67)は3月下旬、地区の自治会連合会の会合で、調査員6人を推薦するよう求められた。自治会役員らに相談したところ「仕事があるので厳しい」「そもそも自治会が担うべき内容ではないのでは」などと難色を示された。
顔なじみの調査員経験者や元役員らに頭を下げ、なんとか3人に引き受けてもらえたが、自身を加えてもまだ2人足りない。「世の中どこも人手不足なのでなかなか集まらない。調査方法の限界に来ているのでは」と嘆く。
■担当世帯を訪ね調査票を配り回収
国勢調査は「日本に住むすべての人と世帯を対象とする国の最も重要な統計調査」(総務省統計局)。調査員は非常勤の国家公務員となり、報酬が支払われる。担当の全世帯を訪ねて調査票を配り、回収する。期限内に回答がなければ、督促したり世帯構成などを近隣住民から聞き取ったりすることもある。
調査員の確保は市町村の役割で、福井市は毎回、市内各地区の自治会連合会長に調査員の推薦を依頼している。市は1100人以上必要と見込み「調査区域の実情を把握している調査員を確実に確保するため、自治会に依頼する形をとっている」(行政DX推進課)と説明する。自治会からの報告期限を4月30日に設定し「遅くても5月末までには確保したい」とする。
一方、調査員の公募に力を入れる自治体も増えている。約350人が必要な敦賀市は前回、自治会への推薦依頼と並行して調査員を1カ月間公募したが1人も集まらなかったため、今回は公募開始時期を前倒しして期間も2カ月半に延ばした。鯖江市は公募に加え、前回調査員を務めた市民にも声をかけて約250人を集めたい考え。
約400人が必要な越前市も公募開始時期を1カ月早めた。広報紙やホームページで「100世帯4万6千円、200世帯8万6千円」「誰でも簡単にできるお仕事です」「スキマ時間のあるシニア層、パート主婦層、大学生に向いています」とアピールしている。市国勢調査室は「高齢化や働く高齢者の増加で調査員の確保が難しくなる中、区長さんだけに負担をかけられない。公募でできる限り多く集めたい」とする。
■国はネット回答を促進 50%目標
国勢調査員の負担軽減へ、国も調査手法を少しずつ変えている。
最も力を入れているのがインターネット回答の促進だ。調査票を回収し、記入漏れがないか確認する手間が省ける。前回は調査票に記載されたログインIDなどを回答者が入力する必要があったが、今回はQRコードを読み取れば自動で入力されるようにした。
国はネット回答50%を目標に掲げている。前回2020年の福井県は40・8%で、全国平均の37・9%を上回った。ネット同様に回収の手間が省ける郵送回答も県内は46・0%と、全国平均41・9%を上回った。
調査票の配布も少し楽になるかもしれない。国が都道府県向けに行った説明会では、家の電気はついているのにインターホンを押しても反応がないといった場合は、手渡しでなく郵便受けへの投函(とうかん)も可とする方針が示されたという。新型コロナウイルス禍の前回は対面を避けて調査票を投函する方式を採ったが、それ以前は、対面で手渡しできるまで何度も訪ねなければならなかった。
前回は調査員が記入していた世帯の種類(一般、病院の入院者、老人ホームの入所者など)と住宅の建て方(一戸建て、長屋、共同住宅など)を、今回は回答者が記入するようになる。外国人世帯向けには前回、調査員がどの言語を理解できるか確認した上で調査票を配布したが、今回は外国人向けのリーフレットをまず配布する。
【国勢調査】国内の人口や世帯構成を把握し、行政施策の基礎資料を得るため国が1920年から5年ごとに行っている全数統計調査。外国人を含め、日本に3カ月以上住んでいる全ての人の氏名や生年月日、就業状況などを調べる。衆院小選挙区の区割り改定や地方交付税の算定、将来人口の推計などに使われる。今年は10月1日が調査基準日で、9月20日から調査員が調査票を配布する予定。