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(18)人手が足りない 補修に全国から援助を
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 今もあたりに焼け野原が残る神戸市兵庫区会下山町。屋根にかぶせた青いビニールシートが目立つ。

 運送業、大野房之助さん(四二)の木造二階建ては、屋根がわらが三分の一ほど落ち、正面の壁はタイルとモルタルがはがれている。

 市の被害判定は「半壊」。昨年買った中古住宅で、まだ二十年もローンが残る。一月下旬に申し込んだ補修工事は、この二十三日にやっと始まった。雨漏りがひどく、神戸市中央区の会社事務所に家族で避難中だ。

 「近所には、ちょっとした屋根の修理で三百万円も請求された人がいる。うちにも『すぐ修理できる』という業者が来たが、うかつに信用できない。少し待ってでも、知人に紹介された地元業者こ頼むのがいいと思った」と大野さん。業者には「三、四百万なら用意できる。これで住める状態に」とだけ注文した。

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 大野さん宅の工事を請け負う北区の山本工務店には、ほぼ毎日、補修依頼の電話がかかる。震災前から下請けの大工や左官などの職人は不足気味だった。当然、人手は足りない。

 「震災直後は屋根のシート張り、水道が復旧すると水道管の修復、そして梅雨を前に屋根と壁の補修が増えてる。同じ種類の工事が同時期に集中し、職人不足に拍車がかかっている」と山本徳文社長。

 職人の分業化も補修の遅れに影響する。壁のひび割れ修復でも、足場の組み立て、モルタル解体、木枠の修理、防水紙の張り付け、壁塗り、塗装と分かれる。一軒建てるのには三十種類以上の職人がかかわり、一部の予定変更で工期全体が大きくずれてしまう。

 ある大手住宅メーカーは、名古屋、埼玉などから八十人以上の職人を集めた。会社が建設した住宅を対象に、区域を決めて職人を集中投入し、道路渋滞による効率の悪さを補う。それでも補修の完了は五月ごろ。「新築は、早いケースで六月着工、工期も通常より二、三カ月長い八カ月はかかる」と同社はいう。

 神戸市の住宅融資相談窓口には二月下旬以降、補修と建て替えの相談が約一万件も寄せられた。しかし、まだ申し込みは二%に満たない。実際の補修や建て替え工事のピークはこれからだ、と窓口はみている。

 業者不足の中、もうけを狙った悪質業者のうわさが広がり、住民も神経質になっている。

 兵庫県建築士事務所協会への要望のほとんどは、「信用できる業者を教えてほしい」という内容だが、神戸市住宅局復興計画プロジェクトチームは「ひどい業者はごく一部。あまり疑い過ぎると業者の方が請け負いを断るケースもある」と忠告する。

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 今月中旬、長田区の野田北部町づくり協議会の要請で、福島県から建築士と大工さんら延べ二十三人が訪れた。地区の二軒の全壊家屋を修復したが、交通、宿泊費を含めた人件費は、震災前相場の六割ほど。もうけを度外視した住宅補修のボランティア活動だ。

 仲介役を務めた須磨区の建築家、森崎輝行さんは「住宅補修のボランティアに参加しようという職人が全国にはたくさんいる。ただ、こうした受け皿がない。地元の建設業界とも調整を図りながら、行政が地域のまちづくり協議会と連携してまちの再建を目指してほしい」と指摘している。

1995/3/27
 

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