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(2)土地はないのか 仮設立地の条件厳しく
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 「もう”在庫”は吐き出した。公園に港湾用地、国鉄清算事業団の土地、公的住宅を建てる計画のあったニュータウン用地まで手をつけた。ほんまにしんどい」

 神戸市で仮設住宅の用地探しを担当する住宅局計画課。市役所第二庁舎は全壊し、第一庁舎八階会議室に間借り、入り口には「関係者以外立入禁止」の紙が張られている。取材に応じ、廊下に出てきた担当者は、候補地リストを手に、疲労をにじませた。

 兵庫県が四月末までに建設を計画する仮設住宅は計四万戸。神戸市内は二万二千戸にのぼる。すでに発注分は百二十七カ所、一万七千戸。ニュータウンなどはまとまっているが、既成市街地は、決定先がぽつりぽつり点をばらまいたようになっている。

 地震が発生した一月十七日。仮設住宅の用地探しは、市街が混乱を極めたその日の午後から始まっていた。

 都市計画畑出身で、市内の公園をそらんじていた笹山幸俊市長は、自ら用地リストを作成、職員に現地に出向くよう命じた。自転車やミニバイクで渋滞する道路を縫うように進む。ようやくたどり着いた六甲道の大和公園は、すでに避難者のテントや自動車で埋まり、毛布にくるまった人たちであふれていた。

 被害が大きい地域の公園は避難者が数多く集まり、建設の余地はない。東灘区の本庄中央公園では、十数台の自動車に立ち退いてもらった。被災後三日間で確保できたのは十七カ所だった。

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 「ゴルフ場に建てられるのでは」「国有地や県有地をもっと使えば」…。被災者からは毎日、市役所に電話がかかってくる。山林や農地、企業の遊休地など、用地の提供申し入れも数多い。

 「でも、そう簡単にはいかない」と担当者。住宅は二戸二十五平方メートル前後だが、通路や作業用スペースを含めると一戸平均九十平方メートルの土地が必要になる。一カ所で千平方メートル以上の面積▽上下水道、電気などの整備が容易▽交通の便▽二年以上の無償提供-などが市の仮設用地の基準という。

 提供の申し出があった約百二十件のうち、建設決定はわずか二件。市と話した申し出者は「市は二年以上と、提供期間をあいまいにする。それではこちらも計画が立たない。やり方があるはずだ」とも不満を述べる。

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 神戸市や兵庫県の担当者は、七日の消印有効で締め切った同市の二次募集の結果に関心を払っている。二次は被災者が入居希望先を選び、地域別に抽選する方式を取っている。地域別の仮設住宅人気ランキングがはっきりし、今後の建設先の目安にもなるからだ。

 「仮設に空き家が出れば、厚生省の補助は原則として出ない。財政は非常に厳しく、入る人がいない仮設はつくれない。市街地の狭いところでも、二階建てをつくらなければならないかもしれない」と担当課。

 JR灘駅近くに国鉄清算事業団が持っていた信号所跡用地。線路わきの細長い土地に百五十八戸の仮設住宅が建っている。その傍らで、まだ約五十人がテント暮らしを続けている。「どんどん西から建ってきた。こちらは電気も水道もない」。腹立ちをぶちまけるような口調だった。

1995/3/8
 

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