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(22)3年間で12万5千戸 展望 なお見えず 用地問題解決カギ
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 議会の否決で、異例の組み直し提案となった芦屋市の新年度予算。震災関連費は上積みされたが、わずか五十戸という市営住宅の建設戸数に変化はなかった。

 これ以上無理なのか、という問いに、後藤太郎助役は、疲れをにじませながら話した。「精いっぱいだ。五十戸を百戸、それ以上にしなければならないことは分かっている。が、用地はない」

 震災から二カ月半。市役所庁舎の廊下には今も毛布が敷き詰められ、避難住民らが体を休める。市の調査では、約三万三千戸のうち約三割の一万戸以上が住めない状態と分かった。その割合は被災市の中では群を抜いて多い。

 緊急課題だった仮設住宅は、学校の運動場にも建てた。そんな中で「恒久住宅も必要」と、新年度に建設する五十戸分の用地をやっと確保した。一万戸の〇・五%分にすぎない。

 「自力で再建する人がどれだけいるか分からないが、高齢の被災者の多さを考えると公営住宅は相当いる。公共用地はなく、民間の土地を買収しなければ公営住宅は建てられない」と後藤助役は言う。

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 十二万五千戸の建設を目指す兵庫県の住宅復興三カ年計画案で、新設はうち十一万戸にのぼる。約六割の六万四千戸が公営、公社・公団などの公的住宅。震災前の実績では公的住宅は二割以下で、「公」が積極的に住宅供給を担う方針だ。

 計画は、「早く」という要請にこたえるため、ニュータウンなど新市街地を積極的に活用、被災地からの転出を促進することを盛り込んでいる。県都市政策課の坂井豊課長補佐は「既成市街地での土地区画整理など、街づくりを進めるためにも転出を促したい」とし、「過密だった街を適疎にする必要もある」と強調する。

 膨大な戸数を三年で建設することは、可能なのだろうか。

 全体のうち七万二千戸を今後、建設することになる神戸市の住宅局復興計画室の鈴木三郎室長は「用地の手当てはこれからだ。三年以内にどれだけの戸数が完成するかは分からない」とする。

 実は、同市の三カ年計画案は、県のように新市街地への誘導策をうたっていない。同室長は「ニュータウンも活用するが、既成市街地にできるだけ住宅をつくり、復興させたい」と説明。各ニュータウンは、計画に沿って上下水道や学校などの整備を進めており、急な変更は困難という。

 県も、市も、「協調して住宅復興に取り組む」とするが、新市街地と既成市街地の住宅整備の方針をめぐって双方で激論が交わされたという。

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 二月末、県は造成中の芦屋市の埋め立て地「南芦屋浜地区」(一二五・五ヘクタール)を被災者用恒久住宅の用地にする方針を明らかにした。民間マリーナを中心に、高級志向の住宅を建設する構想からの転換だった。

 恒久住宅の用地として、南芦屋浜は芦屋市にも頼みの綱だが、方針転換に関する事前の説明は市になかった。

 「これまでの計画が白紙になるのか、住宅建設戸数を増やすだけなのか。分からない。県が構想案をまとめるのを待つしかない」と後藤助役。被災者に市の住宅復興計画を明らかにできるのは、構想が固まる後になる。県企業庁は「浜の造成を急ぎ、住宅建設を急いでも、入居までには、三年はかかる」という。

 避難所から仮設住宅へ、さらに永住できる恒久住宅へ。課題を背負った行政にとって三年という期間は短い。しかし、家を失った人たちにとって三年は重く、厳しい道のりだ。

(記事・桜間裕章、小野秀明、河崎光良、藤本賢市、原康隆、網麻子

=第一部おわり=

1995/3/31
 

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