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(4)いつになった 最終ランクの働き盛り
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 「話が違うやないか。また避難所暮らしが続くのか」。くじ引きを食い入るように見詰めていた西宮市西田町の女性(67)がつぶやいた。

 三月一日、西宮市民会館で行われた仮設・公営空き家住宅の第二次抽選会。ボランティアが箱の中から紙を取り出し、番号を読み上げるたび、安どと落胆のため息がもれた。

 今回は(1)六十歳以上だけの世帯(2)障害者のいる世帯(3)母子世帯-が対象で、当初は応募者全員で抽選する予定だった。三千二百七十戸に三千六百八十世帯が申し込み、倍率は一・一倍。応募者にはその低さに期待感が強かった。

 だが、市は当日になって突然、抽選方法を変更。母子世帯、身障者世帯、七十歳以上の高齢者世帯は無条件で入居できることにし、抽選の対象を六十歳以上七十歳未満の世帯だけに絞った。

 「高齢者でもより体の弱っている人を優先せざるをえない」と市は話すが、倍率は約一・四倍に跳ね上がり、六十歳代の世帯に厳しい結果になった。

 仮設住宅の入居募集は、兵庫県の指導で各市町が優先順位をつけている。二月初めの神戸市一次募集では、高齢者だけの世帯など第一ランクだけで八倍の競争率。高齢者、乳幼児、妊婦がいる世帯など第二ランクは抽選の対象にもならなかった。

 「弱者優先」といっても、その大部分はまだ入居できていない。まして最後の第四ランクとなる働き盛りの世帯からは「宝くじより確率が低い」との声さえ上がる。

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 四月末までの期限で、一挙に計四万戸をつくる未ぞうの仮設住宅建設。果たして、予定通りに完成し、「希望者全員入居」はできるのだろうか。

 県と業界の窓口の「プレハブ建築協会」(東京)の谷口哲彦専務理事は「他の注文を後回しにし、全力で取り組んでいる。正直言ってきつい」と話す。

 同協会が直接、野坂建設相から協力要請を受け、災害対策本部を設けたのは、震災の翌十八日。加盟する仮設専門のリース業者十二社のほか、未加盟の六社や、一般の住宅建設会社二十社にも協力を求め、戸数を割りふった。

 だが、建設用地が急きょ変更されたり、予定外の造成があったり。水道が近くにきていない用地もあった。長引く不況で在庫は乏しく、各メーカーは「工場を深夜十二時まで稼働させ、付き合いのない業者にも頼んだ」「約百の協力会社に要請し資材と作業員を集めた。資材引き渡しが午前二時、三時になることもある」などと話す。

 それでも日程はずれ込み気味。自治体は四万戸で足りない場合の対策について、まだ白紙状態だ。

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 西宮市の抽選会場で、避難先の市中央体育館から約三十分歩いてきたという男性(62)に話を聞いた。

 一次募集は落ちた。妻が五十八歳のため、最初から二次の対象に外れていた。「何かの間違いで、補欠入居にでもならんやろか」とすがるような思いで来てみた。もちろん自分の番号は黒板になかった。

 次の三次募集は約二千八百戸の予定。そこに期待をつなぎたいが、今回、選にもれた高齢者世帯以外、どういった層が対象になるかはまだ決まっていない。

1995/3/10
 

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