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(14)途切れた幹線 環境景観重視し整備を
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 「広域道路の必要性は震災で再認識された。十年を目標に整備すべきだ」
 「財源と人手がないと無理だ。市だけでは難しい」

 通称、山幹(やまかん)と呼ばれる市道山手幹線は、神戸と芦屋の市境で、ぷつりと途切れている。「行き止まり」の看板が立つ。その道路の整備をめぐって、兵庫県と芦屋市の間でやり取りが続いた。

 震災は、横に長く、背後に六甲山を控えた神戸・阪神間の交通網の弱さを浮き彫りにした。国道2、43号線は、阪神高速神戸線が崩壊し、交通規制と復興車両で、今も渋滞が続く。

 県は緊急時、国道の代替ルートとして活用できるよう山手幹線を「東西準幹線」と位置付け、関係市町の努力を強く求めた。

 「全線開通には百年はかかる」。震災前、庁内でそんな話も出ていた芦屋市も、復興基本方針に全線の整備を盛り込み、今年度中に新たな区間の事業化を目指す予定である。

    ◆  

 山手幹線は、神戸市長田区・兵庫県尼崎市間二十九・五キロの四車線道路。都市計画決定は、戦後まもなくの一九四六年にさかのぼる。

 戦災復興の中で事業を進めてきた神戸市内十四・二キロは一〇〇%開通し、兵庫県尼崎市は八九%、兵庫県西宮市は六九%が完成している。

 兵庫県芦屋市は二・四キロのうち、JR芦屋駅北の再開発地区のみ〇・二キロが完成、開通率は九%にすぎない。現在、同地区から東へ市道宮川線までの約〇・二七キロを七カ年計画で整備中だ。

 住宅密集地を通り、市内の総事業費が約四百億円を見込まれるなど、用地買収に時間と費用がかかるのが、遅れの理由だが、後藤太郎助役はこうも話す。

 「2号線や43号線へスムーズに車を流すため、市は南北道路の整備を優先してきた。山幹の着工順位は必ずしも高くなかった」

 震災後、沿道住民の意識に変化も起き始めている。倒壊家屋や、倒壊を免れた老朽家屋の世帯主らから、市に土地売却の申し出が相次いでいる。

 だが、騒音、排ガスなど環境面の不安や景観への配慮を求める声は根強い。市民の愛着が強い芦屋川は「景観上もこれ以上橋を架けるわけにはいかない」と、地下トンネルが検討されているが、計画では四車線、二十二メートル道路が新たに住宅地を通過する。

 地下化は建設費の増加をもたらし、区画整理など懸案の数多い市の財政をまた圧迫する。市道建設費は、国、市が二分の一ずつを負担、市側には、震災を機に国が三分の二を負担、県、市が六分の一で済む県道へ格上げを、との意見があるが、兵庫県は消極的だ。

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 兵庫県西宮市の山手幹線で未開通の武庫川架橋周辺では、震災後まもなく、同市が測量再開を申し入れ、住民が「どさくさにまぎれて推進しようとしている」と反発。前段の協議会開催も、まだ話し合いがついていない。

 交通ネットワークの整備を目指す県、各市は、神戸・阪神間で「格子状の広域道路網の形成」をうたう。東西だけでなく、南北の交通網も強化する考えだ。

 行政経験が長い、宗正誼・武庫川女子大教授(地域生活論)は「財源の負担など整備手法も見直す必要がある」とした上で、提言する。

 「車のためだけではない、緑の多いゆとりある道路という発想がいる。何が何でも通すというのではなく、地元と一緒に造ろうという熱意が自治体に必要だ」

1995/5/30
 

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