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(22)事業凍結 解除のめど立つ日遠く
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 震災で液状化の被害を受けた芦屋浜シーサイドタウン。高層住宅の南側、四万平方メートルの広大な土地に、約六百五十戸の仮設住宅が立ち並ぶ。

 芦屋市長選が告示された四日。現地に立った候補者が、今後の住宅対策を訴えた。公営住宅の建設戸数を挙げた「公約」に、住民の拍手が響いた。

 住宅都市・芦屋は、市域は狭く地価は高い。公共用地の取得はままならず、まとまった土地はほかにない。ある市職員は「ここが空いていて良かった」と、複雑な表情を見せた。

 土地は、市始まって以来の大事業になる総合スポーツセンターの建設用地だった。総事業費百八十五億円。七月着工、二年後の完成予定を目指していた。

 来年七月完成予定の保健福祉総合センターも、着工寸前で凍結された。

 同センターは、約七千平方メートルの敷地に、デイサービスセンターや、敷地内から出る温泉を利用したクアハウス、保健センターなどを建設、福祉の拠点になるはずだった。工費は百十八億円である。

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 「今年度に終わる小学校の改築などはやらざるを得ない。しかし、そのほかは考え直したい」と、市は説明する。

 新規事業のほか、九五年度予算で見送った継続事業は計五十二。一般会計七百十五億円の半分強は震災関連費に充てられた。

 道路や学校施設など復旧に力点が置かれたが、最大の課題である住宅建設費はまだ入っていない。借金に当たる市債発行は九五年だけで百九十五億円。返済は三、四年後にピークを迎える。

 厳しい財政状況に、福祉などサービス水準はどうなっていくのだろうか。

 国のゴールドプランに基づき、二〇〇〇年に達成すべき福祉施設やホームヘルパー確保など目標を定めた、同市の老人福祉保健計画は次のような青写真を描いていた。

 保健福祉総合センターと、芦屋浜に完成する第二特別養護老人ホームを福祉の中核施設とする。現在市民センターにある福祉会館をデイサービスセンターに転用するなど、センターは計四カ所に拡大する。こうした対応で、年三、四万回のホームヘルプサービス、デイサービスを実施、老人保健施設ベッド数は百五十七床確保する・。

 「今年も限られた予算でケースワーカーやヘルパーをわずかながらも増やした。厳しいが、ソフトの水準は高めたい」と、木戸正行・保健福祉部長。が、第二特別養護老人ホームも、大きな被害を受け、施設の遅れで、計画の下方修正は検討せざるを得ないという。

 市社会福祉協議会の稲継次郎・事務局長は「被災者の生活再建が第一だが、凍結解除時のためにもソフト面の充実を図ってほしい」と要望する。

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 後藤太郎助役は「福祉センターはできるだけ早期に凍結解除したい」と、慎重に言葉を選びながら語る。

 「学校グラウンドの仮設住宅解消が急務だ。恒久住宅は県が建設する南芦屋浜を中心に考えているが、千戸程度は既成市街地で確保しなければならない。スポーツセンター用地の転用も検討せざるを得ないかもしれない」

 芦屋市は、市民一人当たりの納税額が全国でトップ。豊かな税収入に支えられ、地方交付税制度発足以来、不交付団体を保ってきた。その市が五月中旬、西宮、宝塚市とともに交付団体並みの財政援助を国に要望した。

1995/6/9
 

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