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(5)人と組織は 専門家置く防災先進地
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 神戸市役所1号館十三階にある総務局庶務課庶務係。七人の小さな係は、六月初めに開く防災会議の準備に追われている。

 三月二十六日。神戸市の防災会議地震対策部会は実に九年ぶりに開かれた。震度5の想定だった地域防災計画は、震度7にすることを前提に、災害時の職員配置や情報収集、応援要請システムなど検討課題が示された。それに対し、専門家らの意見が相次ぐ。抜本的見直しの基本方針は、六月に示す予定になっている。

 水害など治山治水は土木局、救助・救急、避難勧告は消防局、避難所の担当は民生局…。縦割りに分かれた市役所組織の中で、総務局の庶務係は、対策本部の設置、防災計画の策定など取りまとめ役を務める。

 係は、局内の事務連絡、調整のほか、花時計賞表彰、相楽園会館の管理・運営などを受け持ち、普段、防災とは縁が薄い。市は「災害時の職員の対応など全庁的な対応が必要なため、総務局に防災担当を置いている」と説明する。

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 国土庁以外では唯一という防災局がある静岡県庁を訪ねた。

 部長級の局長をトップに消防防災課、地震対策課があり、職員は約六十人。井野盛夫局長は十八年余り地震対策を担当してきた。

 震災で兵庫に派遣した県職員は延べ九千三百人にのぼる。発生の一月十七日には、十八人の職員が神戸に向かい、翌十八日に救援物資を載せたトラックを送り込んだ。自主的に取った対応の早さは際立っていた。

 同局は、被災地での体験を基にした提案を各職員に求めている。

 自主防災組織の救出・救助マニュアルの作成、消防と病院間の無線の整備、救急車配置の見直し…。約千六百に及ぶ提案資料を示しながら、同局長は「できるものは早急に予算化したい」と話した。

 「防災、地震対策で最も大切なのは目標を明確にすることだ。どんな災害が起こるかを予想すれば、どこが責任をもつかがはっきりする。問題点を抽出できる人がいなければ対策は生きてこない」

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 静岡市役所は五月九日、管理職約百八十人を対象に抜き打ちの動員訓練を実施している。

 午前六時に指令を出し、九十分以内に八五%の職員が集まった。大半は徒歩、自転車、バイクが通勤手段だった。

 訓練は多くの自治体でも行われている。しかし、大規模災害時には、交通機関が使えないことを前提にしていない。全庁的な体制を組むとき、自宅を壊され、出勤不能になる職員がいることも計算に入っていない。

 神戸市が昨年六月、午前六時に防災指令を発令して実施した職員の非常招集訓練は、多くの職員が電車などで出勤、全員が集合した。しかし、今回の震災で当日夕方までに出勤できたのは約四割だった。

 「先進地の静岡と神戸の最大の違いは人の問題だ」と神戸大工学部地域安全計画研究室の大西一嘉助手は強調する。

 「防火水槽、防災用備蓄倉庫などの問題はあるが、街の姿は大差ない。行政の組織の中に防災の専門家がいるか、災害時にリーダーシップを発揮できるかの差は大きい」

 この四月、神戸市は当面の復旧と復興本部に力点を置いた人事異動を実施した。しかし、機構改革は先送りし、防災の専門組織とスタッフは検討課題として残されている。

1995/5/20
 

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