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(7)備蓄の質と量 心もとない緊急対応策
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 毛布   千八百十枚
 ロウソク 百七十三本
 ゴザ   五十二枚

 震災前、神戸市が地域防災計画に基づいて各区役所に備蓄していた物資はこれがすべてだった。

 食料はゼロ。計画は、神戸市内の指定業者からの調達による、としていたが、震災で業者も被災した。想定を超える大災害に、備蓄はあまりにも心細かった。

 兵庫県の備蓄も、県庁生田庁舎や各地の福祉事務所にあった計二万枚の毛布だけ。神戸市と大差はなかった。

 「ある程度の対応はできたと思う」。尼崎市消防局の本田良生・経理係長は耐震型緊急用貯水槽のパンフレットを手に語った。

 阪神尼崎駅に近い市防災センターと北部防災センターの近くに埋め込む貯水槽は各百トンの飲料水を備蓄。それぞれ一万人の三日分に相当する。震災時は、センターに避難した住民らに配り、消火にも使った。

 防災センターには備蓄庫がある。北部と合わせ乾パン八万八千食、毛布五千六百枚、防水シート千六百枚、医薬品千セット…。備蓄を始めて九年になるが、活用は初めてだった。

 皮肉にも被災地で、比較的被害の少なかった尼崎で備蓄が進んでいた。

    ◆

 震災を機に、備蓄充実の動きが出ている。とりわけ関東の自治体は敏感だ。

 横浜市はこれまで、乾パン六十万食、水の缶詰五十六万缶、粉ミルクとほ乳瓶五千セット、毛布十万枚などを大型備蓄庫など五十一カ所に保管していた。市内で震度6以上の地震を想定、食料はさらに三カ年で、被災者数に見合う約百二万人分まで増やす計画だ。

 市災害対策室は「乾パンは五年で更新など、財政的制約はあるが、品目も含め見直したい」。家庭の備蓄も呼びかけてきたが、直撃を受けた被災者は取り出す余裕がない。行政の責任として充実を決めたという。

 大規模災害に備え何が必要なのか。

 神戸市の区役所で避難所開設に走り回った職員は実感として話す。「二日目になれば救援物資も届きだす。問題は初日だ。避難所にたどり着いた人たちがほっとできる物資が最低必要と思う」とし、毛布や飲料水、乾パン、レトルト食品、カセットコンロ、ランタン、懐中電灯などを挙げた。

 「備蓄は避難所となる学校などにないと意味がない。区役所などにあっても届けることができない」

 倒壊した民家からの救出・搬送に、電動のこぎり、はしご、担架などが身近にあれば、との指摘も多い。

 被災地では、西宮、伊丹、明石市などが備蓄増に着手した。量は各自治体の判断だが、三千人の避難者が出た明石市は「食料は三千人の三食」と想定した。

    ◆

 「地域防災計画の見直しの中で考えたい」

 五月十五日の神戸市会本会議。大規模な余震などに備え、備蓄や避難場所の整備などを問われた笹山幸俊市長が答えた。「二次災害は避けられないものと思って山の対策には全力を挙げる」としたが、備蓄などの緊急対応策は示されなかった。

 地域防災計画の改定作業は来年三月末まで続く。備蓄への取り組みはそれ以降になる。当面は、救援物資で残る毛布やカップラーメンなどで対応せざるを得ない、というのである。

1995/5/22

 

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