「震災前に比べて地面が締まっている。安全だ」。スライドでグラフを示しながら、神戸市開発局幹部がボーリング調査の結果を説明した。
震災から約四カ月がすぎた五月十四日、神戸の人工島・ポートアイランドで住民説明会が開かれた。液状化現象の不安は強く、以前から市に求めていた会合が、ようやく実現した。
地震の直後から島は、土中から噴き出した砂と水で泥沼化した。島全体が揺すられ、最高で約六〇センチ沈下、液状化が収まった後も、砂ぼこりが舞った。
「数字を羅列されても分からない。どう安全なのか」「地盤沈下は予想されていた。なぜ対応できなかったのか」。会場から次々に質問が飛んだ。
「これでは不安は解消されない」と、港島自治連合協議会の安田登会長。「市街地との連絡は橋一本しかなく、住民は心配していた。市が人工的に造った土地だ。他の場所とは違う。責任をもって対応してほしい」
説明会は、市が資料を用意した上で再度開くことが決まった。
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神戸市の戦後の主要な埋め立て事業は、七五%が終わったポーアイ第二期も含め十カ所計千四百六ヘクタール。長田区の面積を上回り、兵庫区にほぼ匹敵する。
平たん地が少ない中で、市は「山、海へ行く」の開発手法で、港湾、産業、住宅用地を拡大させた。戦後五十年の神戸の復興、発展を支える役割を果たした。
震災の直撃で、コンテナ埠頭など港湾施設も壊滅状態に陥る。神戸大橋がやられ、島と市街地の交通は遮断される。新交通システム・ポートライナーは八月末、全線開通の予定だ。
埋め立て土砂は、須磨ニュータウンとなった丘陵などから運ばれた。液状化は、一九六四年の新潟地震から知られていたが、「ポーアイは、土砂にばらつきがあり、液状化は起こりにくいと考えていた」と市開発局計画課。予想外の事態と認めたうえで話す。
「被害は真しに受け止め、データ収集を続けている。行政だけで評価するのでなく、学識経験者も加え総合的に考えたい。その結果は今後の埋め立てにも反映させる」
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三月三十一日、六甲アイランド南地区での公有水面埋め立て申請を運輸省が認可した。認可は、コンクリートがれきで埋める緑地部分約二十七ヘクタールだけだが、新たな人工島造成が事実上スタートした。
手続きは異例の早さで進んでいる。一月三十日、神戸港港湾審議会が同地区西半分三百三十三ヘクタールの埋め立てなどの港湾計画改定案を承認。国の中央港湾審議会も日程を早め二月十七日に開いた。その一カ月半後の認可は「がれき処理、港湾復旧は一刻も急ぐ」との理由だった。
「がれき処理を理由に、市民に十分に知らせることなく、埋め立てが加速されている」と、「新しい神戸をつくりだす市民会議」(代表・早川和男神戸大名誉教授)のメンバーは指摘する。
埋め立てを規制する瀬戸内海環境保全特別措置法に基づき、神戸市と協議を重ねた環境庁は「将来の港湾の物流のためにどうしても必要との理由を否定はできない」という。
六甲アイランドを上回る第三の人工島は、十年以内に西半分が完成。コンテナ船の大型化に対応し、大水深の岸壁を整備する。
1995/6/1