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(2)議論は十分か 財政上急ぎ「百年の計」
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 学識経験者や各界代表による芦屋市の復興計画検討委員会は非公開で行われている。四月二十八日。三回目の会合は、基本構想案を事実上決め、次回に文案の確認をする予定でいた。しかし、結論は「持ち越し」だった。

 委員によると、席上、復興に関する二千人の市民アンケートの速報が出された。論議は、案にこの結果をどう反映させるかなどに集まった。三時間の会合では、とても詰めることはできない。「もう一回やろう」「無理に予定に合わせる必要はない」といった意見が相次いだ。

 「最初から、急ぎすぎているという感じがあった」と、ある委員は振り返る。

 三月上旬の初会合。市が示した構想素案は、大阪のコンサルタント会社が作ったものだった。

 「国際文化住宅都市の継承と新たな創生」「快適で災害に強いまちづくり」「ともに築き、助け合うまちづくり」…。そんな言葉が並ぶ冊子に目を通しているうち、事務局の市側が発言した。「区画整理事業は急がないといけない。ここから議論を始めてください」

 都市計画決定の期限は、約一週間後に迫っていた。委員は、思わず発言を求めたという。「百年の計を決めようというのに、なぜ焦るのか」

    ◆

 震災後の街づくりの方向を決める復興計画は、十年後の二〇〇五年が目標だ。兵庫県と神戸、阪神間の被災各市は、六月末をめどに専門家らの審議会や検討委員会で策定作業を進めている。

 神戸市の場合は、学識経験者が作った復興計画ガイドラインをもとに、審議会が論議する。「安全都市」「都市活力」「市民生活」の三小委員会に分かれ、総勢百人の大所帯。会合は、次の通り予定が決まっている。

 四月下旬 初会合
 五月下旬 復興計画案について
 六月中旬 答申案について

 四月下旬の各委員会は二時間でぴたりと終わっている。「三回ではとても議論できない」「市民の知恵、経験のヒアリングが必要だ」と、進め方の疑問が出された。

 同市復興本部は、反論するように話した。

 「復興の方針は早期に打ち出す必要がある。三月にも作りたかったが、実務的には早くて六月になる。三年間かけてきたマスタープランの議論をベースにしており、論議は十分できる」

 災害復旧事業には、高い国庫補助率が適用されたが続く復興事業は今もめどが立っていない。その中で国の九六年度予算案の概算要求が八月に迫っている。

 同市は「計画は、概算要求へ反映させる陳情に間に合わせる必要がある。課題は山積し、財源の裏付けがいる。国は待ってくれない」とも強調する。

    ◆

 四月二十七日、尼崎市は被災自治体で最も早く復興基本計画を策定した。

 「財政状況は厳しい。何とぞ理解をいただきたい」「それで復興といえるのか」。委員の提言に、行政側が及び腰になる光景は、検討委員会で繰り返された。

 副委員長の高田昇・立命館大教授は「財源の確保が論議にのしかかった。震災復興は、自治体のレベルを超えている。財政の地方分権が必要だ」としたうえで、こう指摘した。

 「基本計画は理念づくりにとどまった。どう肉付けしていくか。肝心なのは、計画決定後の市民参加の仕組みを確立することだ」

1995/5/16
 

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