連載・特集 連載・特集 プレミアムボックス

(19)福祉のまち 震災機に抜本見直しを
  • 印刷

 五月二十九日、被災地障害者センター(約四十団体)が、兵庫県と神戸市に出した要望書は多岐にわたっていた。

 緊急時の保健・医療・福祉サービスの問題、仮設住宅の設備の問題、働く場の問題…。復興計画に反映を、とした二十六項目の内容は、震災で障害者が受けた打撃の大きさを示していた。

 「今、街が変わらなければ、五十年間はそのままになってしまう」。センター構成団体の一つで、障害者の自立を支援する「メインストリーム協会」(西宮市)の代表、廉田俊二さん(34)は力を込めた。

 障害者にやさしい街づくりとは・。車いす生活を送る廉田さんは、体験を元に話す。

 「震災で電車が止まって代替バスが運行されたが、車いす利用者は乗れなかった。学校には段差が多く、車いす用トイレがないなど、障害者が避難所で暮らせないことも分かった」

    ◆

 兵庫県には「福祉のまちづくり条例」、神戸市には「都市施設整備に関する規則」がある。国は昨秋、障害者、高齢者らに配慮した建築物をつくることを定めた「ハートビル法」を施行した。

 新築や大規模改修の際、段差解消やスロープの設置などを義務付ける内容だ。

 二十六日の全線開通に向け急ピッチで復旧工事が進む神戸市灘区の阪神電鉄新在家駅。ホームにあけた二メートル四方の穴は、エレベーター新設のスペースで、阪神が損壊した四駅、JRが再建・新設する三駅に設置する方針。阪急も伊丹駅で検討している。県や神戸市が持つ助成制度が大きな促進剤となっている。

 しかし、「条例はまだまだ不十分だ」と廉田さんらは指摘する。

 学校などにエレベーターの設置義務がない▽整備義務の店舗や飲食店は三百平方メートル以上で、それ以下のファミリーレストランは対象外・など、障害者が日常利用する施設をカバーしきれていないという。

 県と神戸市は震災を機に、条例や規則を改正する。県はエレベーター設置義務付けの範囲を店舗や飲食店、体育館などに広げるが、いずれの改正も、学校のエレベーター設置、適用店舗の面積引き下げなどは見送る考えだ。

 市規則は、県条例より緩やかで、店舗などの対象は五百平方メートル以上、守らなかった場合の勧告・公表がない。市障害相談課は「県条例の水準まで引き上げるのは当分難しい」とも言う。

    ◆

 五月十五日、県立福祉のまちづくり工学研究所は、復興計画への提言を発表した。個々の建築物の改善だけでなく、面的に住みやすい街をつくることに力点を置いた。

 コミュニティーの中心になる学校を核に、障害者や高齢者の住居や施設を混在させる、利便性の高い駅前地区を保健、医療、福祉サービスの拠点にし、周辺に障害者らの住居を提供する・などを盛り込み、災害復興住宅についても、車いすが通れる廊下やドア、広い浴室の確保を要請した。

 「仮復旧の道路に段差が多いなど、非常時だからと、高齢者や障害者が追いやられている。条例が決めているのは最低限。福祉をまちづくりの基本に位置づけてほしい」と、相良二朗・主任研究員。

 災害に強い街とは、人にやさしい街だ。すべての人々が社会的不利益を受けることなく暮らせる街だ。提言にはそんな考え方が貫かれている。

1995/6/6
 

天気(9月7日)

  • 33℃
  • ---℃
  • 20%

  • 37℃
  • ---℃
  • 40%

  • 35℃
  • ---℃
  • 20%

  • 35℃
  • ---℃
  • 30%

お知らせ