連載・特集 連載・特集 プレミアムボックス

(20)揺らぐブランド 「国際交流の拠点」再び
  • 印刷

 メーンホールは久々に外国語が飛び交い、活気に満ちていた。

 ポートアイランドの神戸国際会議場で五月二十二日、震災後初めて国際会議が開かれた。比較的地味な工学系の学術会議に、二十四カ国の研究者が参加した。

 「正直いってキャンセルを覚悟していたが、主催者がよく決断してくれた。神戸の健在ぶりがアピールできる」。財団法人神戸国際交流協会コンベンション事業部長の永戸貞男さん(43)は、会場の片隅でオープニングセレモニーを見詰めた。

 神戸市が「コンベンション都市」を掲げたのは一九八一年の博覧会ポートピア81からだ。会議場、展示場などを建設し、翌年、推進本部を組織した。九三年の国際会議開催は百八十六件。京都を上回り、東京、大阪に次いだ。

 「誘致には、会議場やホテル、アクセスなどが欠かせないが、総合的な都市の魅力が決め手」と同協会。会議の合間に美しい景色が楽しめ、食事や酒も味わえる、そんな街の雰囲気が大事という。国際都市・神戸のイメージは、何にも勝る武器だった。

 しかし、「震災で壊滅」というニュースが世界に流れた。既に今年、神戸で開催予定の十六の国際会議がキャンセルされた。横浜市など各都市は、数千人規模の大会議場を建設するなど、すでに二千年まで視野に入れた誘致合戦は過熱している。

    ◆

 神戸商工会議所が、市内で各種の会議を開いた企業や団体に神戸の印象を尋ねたところ(1)都市景観の良さ(2)国際性(3)ファッション性・が上位を占めた。

 「神戸市や企業は、都市イメージを最大限に活用し、それがまた都市を引っ張ってきた」と、会議所の藪野正昭産業部長は話す。開発、観光、ファッション、食品…と「神戸ブランド」を有効に活用したケースは枚挙にいとまがない。

 阪神間の諸都市も、山と海の自然環境、保養地としての戦前からの蓄積、数ある大学といった特徴をつかみ、基本計画に「国際文化住宅都市」(兵庫県芦屋市)「文教住宅都市」(兵庫県西宮市)などを盛り込んできた。

    ◆

 「長年、お世話になったが、秋に開催するAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の準備がありますので」

 五月初め、兵庫県庁に移転のあいさつに訪れた在神戸インドネシア総領事の声は消え入りそうだった。国際都市を支えてきた在外公館。オランダ、フィリピンも大阪へ移った。帰ってくるのかどうか、明確な答えはまだない。

 「震災の影響はやむを得ないが、これまで培ってきたものを、一刻も早く復旧させたい」と神戸市企画調整局。市は復興計画案で、六甲アイランドに在外公館など国際交流ゾーンをつくるなど新たなプランも打ち出している。

 神戸には九十七カ国、四万数千人の外国人が住む。韓国・朝鮮人、中国人らアジアの人たちが圧倒的に多い。専門家は「神戸を外国人が住みやすい街にする施策、土壌づくりがもっと必要だ」と指摘する。

 都市デザイン論が専門の角野幸博・武庫川女子大教授は「神戸はイメージが先行し、実態をはるかに追い越しているのが現実だった」としたうえで、「過去の文化的ストックを生かし、都市をけん引できるイメージを市民の力で生み出さねばならない」と話した。

1995/6/7
 

天気(9月7日)

  • 33℃
  • ---℃
  • 20%

  • 37℃
  • ---℃
  • 40%

  • 35℃
  • ---℃
  • 20%

  • 35℃
  • ---℃
  • 30%

お知らせ