日々小論

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 民俗学の創始者、柳田国男が広めた概念の中で、最もよく知られるものの一つが「ハレ」と「ケ」だろう。

 日常的な生活が褻(け)であるのに対し、晴(はれ)は祭りなどの年中行事や七五三などの通過儀礼、つまり特別な機会のことをいう。

 それが近世の頃から、ハレとケがはっきりしなくなっていったと柳田は言う。普段でも晴れ着のような色彩のものを着るようになったのがその一例だ。

 確かに、にぎやかな街は毎日が祭りのようだと形容される。おしゃれをして演劇を見たり観光や外食をしたり。暮らしのところどころにハレが入り込み、日常を活性化している。

 そんな現代の暮らしが、新型コロナウイルスの感染拡大で、ケ一色になった。ハレに関わる動きが止まって経済が停滞し、伝統的な祭礼やイベントも軒並み中止や延期になった。

 その後、緊急事態宣言と移動制限の解除が続き、外出の楽しみが戻ってきた。感染防止に気を使いつつも人と会うことができる。芸術鑑賞もできる。

 大阪市立美術館の篠雅廣館長は、館の再開にあたり「美術館は日常から少し離れた祝祭空間です」と述べ、少し疲れたら美術館へと呼び掛けた。

 身近にあったハレがなくなって初めて、それが味わえるありがたさを痛感した。

 しかしケは、本来かけがえのないものだったはずだ。阪神・淡路大震災のとき、静穏な日常が一瞬にして破られる経験をした。コロナ禍では、大切なケを退屈でつまらないものと感じてしまった。そのことをむしろ省みなければと思っている。

 ステイホーム自体は悪いものではない。家で平凡に過ごす幸せを深く味わうためにも、上手にハレの時間を楽しみたい。

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