日々小論

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 東京大空襲・戦災資料センター(東京都江東区)が全館リニューアルを終え、6月に再オープンした。戦争を知らない世代に空襲被害の実相が伝わるように新しい展示に挑戦したと聞き、出張の合間に訪ねてみた。

 同センターは、市民団体・東京空襲を記録する会などが呼びかけ、市民らの寄付で2002年に開設された。被害が最も大きかった下町の住宅地にある。

 最寄り駅からの途中、小腹がすいたのでおにぎりを買い、気持ちよさそうな木陰が広がる芝生の公園を見つけて食べた。そこが多くの空襲犠牲者の遺体を一時埋めた仮埋葬地の一つだったことに、館内の「被災地図」を見て気づく。一気に、展示が現実味を帯びてくる。

 わずか数時間で街を焼き尽くし、10万人もの死者を出した1945年3月10日未明の空襲は写真や映像がほとんど残っていない。新設した「夜の体験」コーナーは、真っ黒な壁に体験記や体験画を並べ、暗闇を逃げ惑う恐怖を再現した。「名前と顔写真の壁」は、遺族の協力で8家族30人の犠牲者を紹介する。

 何をどう伝えるか。3年前から体験者と若手研究者らが議論を重ね、展示内容を練り上げたという。立場や世代を超えた共同作業が、いずれくる「体験者不在の時代」に、かけがえのない財産になるだろう。

 だが、ここにもコロナ禍が影を落とす。戦後75年に合わせたリニューアルは関心を呼ぶ好機だがPRもままならない。入館は当面予約制で人数を絞り、館内のガイドも控えている。

 毎夏に企画する体験を聞く会など人が集まる催しは避け、オンライン企画も検討中という。むしろ若者や地方からも参加しやすくなる。新たな発信方法にもぜひ、挑戦してほしい。

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