日々小論

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 1945年7月16日、史上初の核実験が米ニューメキシコ州の砂漠にある「トリニティ・サイト」で実施された。午前5時半、夜明け前のことである。

 実験は、想定を大きく上回る威力を見せつけた。爆風は180キロ離れた民家の窓ガラスを壊したという。桁違いのすさまじいエネルギーが放出された。

 これを人間に使うべきでないのは誰の目にも明らかだ。だから開発計画に参加する研究者の間で使用をためらう声が上がった。開発の中心だった物理学者シラードも日本への投下に強く反対した。だが、残念ながら、そうした声はかき消された。

 長崎で被爆した芥川賞作家林京子さんは99年、トリニティ・サイトを訪れた。このときの体験を基にした作品「トリニティからトリニティへ」に次のように記している。

 《(前略)地上で最初に核の被害を受けたのは、私たち人間だと思っていた。そうではなかった。被爆者の先輩が、ここにいた。泣くことも叫ぶこともできないで、ここにいた》

 大地をも傷つけ、沈黙させる核兵器。人類が許されないものを手にしてしまったことを実感を伴って伝える。

 「核なき世界」の実現に向けて各国の足並みがそろわない。唯一の被爆国である日本も米国の「核の傘」に身を委ねたままだ。ただ、確かに言えるのは、無数の市民を無差別に殺りくする非人道兵器がこの世にあってはならないということだ。

 「核の時代」が幕開けを告げた実験から間もなく75年になる。実験から1カ月の間に、日本は2度の原爆投下と終戦を経験することになる。

 この国の運命を決めた日々を改めてかみしめながら、節目の年の夏を過ごしたい。

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