この本、文章を書く人に突き刺さっているはずだ。多分いや絶対に。「三行で撃つ」。著者の近藤康太郎さんは、猟師兼コメを育てる朝日新聞の名物記者として知られる。
近藤さんの文体は、個性的で新聞らしくない。それでいて読みやすく笑いも誘う。文章技巧25発を紹介する同書は、つかみ、起承転結、常とう句の害悪、一人称、文体、リズムといった技術を網羅しつつ、内容は方法論にとどまらない。
文章を書き始めることは誰でもできる。でも、タイトルで目を留めてもらい、前文で引き付け、読了まで付き合ってもらうことは本当に難しい。
多くのメディアはネット上にも読者を求めている。検索すると、ヤフーニュースには300超のメディアから1日4千本の記事を配信しているという記事があった。
私もネット媒体に出稿するようになり、面白さを感じつつ、紙との違いも教わった。「この記事は読まれるだろう」という願望含みの皮算用は当てにならない。ネコ関連の記事がPVを集めるネットの現実は、昔読んだ新書「ネコがメディアを支配する」のタイトル通りだった。
「三行で撃つ」を読み、「ここまでやるのか」とうめき、励まされ、「だよな」とうなずく。求められる「いい文章」のくだりには撃たれた。
〈文字どおり、人を、いい心持ちにさせる文章。落ち着かせる文章。世の中を、ほんの少しでも住みいいものにする文章〉
凡庸な私は空砲だろうが空振りだろうが繰り返すしかない。こんな一節も見つけた。
〈ブラックホールのような深い井戸に石を投げ込むのであっても、絶えず、倦(う)まず、石を投げ込むんです〉
