日々小論

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 東日本大震災の発生から10年になった先月、東京電力福島第1原発が立地する福島県大熊町に、阪神・淡路大震災の犠牲者を悼む「1・17希望の灯(あか)り」の炎が運ばれた。分灯は10カ所目になる。その火は被災者の心と心を結びつける。

 コロナ禍がなければ、福島を出発した五輪の聖火リレーも、大勢が見守る中で復興への思いを手渡していくはずだった。

 同じ火でも、松明(たいまつ)は自分の身を焼いて暗闇を照らす。「そのたいまつに我々(われわれ)のひとり、ひとりがなりたい」と書いたのは、5年前に亡くなったジャーナリストのむのたけじさんだ。

 戦中は朝日新聞の記者だったが、自らの戦争責任を取るために辞職し、1948年に秋田県横手市で週刊新聞「たいまつ」を発刊する。30年間、平和を訴える火を絶やさなかった。

 その精神を元にした「むのたけじ地域・民衆ジャーナリズム賞」の第3回大賞に、大阪の月刊紙「新聞うずみ火」が選ばれた。反戦、反差別の報道を続けた故黒田清さんの遺志を継ぎ、地域と全国の問題を独自の視点で報じていると評価された。

 うずみ火は火鉢などの灰の中に埋めた炭火。選考者の一人でルポライターの鎌田慧さんは、受賞式で「『たいまつ』に通じるところがある」と述べた。

 4月号では原発問題や沖縄の辺野古埋め立て、大阪府市一元化条例などを取り上げている。

 同紙代表の矢野宏さんは創刊から15年間、紙で出すことにこだわってきた。情報技術社会に取り残された人をつなぐのは紙しかない、と考えるからだ。

 「権力の横でなく、泣いている人の横に立つような新聞でありたい」と矢野さんは話す。熾(おこ)った炭はしぶとく、人々を温める火種となっていくだろう。

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