日々小論

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 「震災があってから、いいことなんてなかったんちゃうかなぁ」。阪神・淡路大震災の復興再開発事業が続く神戸・新長田駅南地区で、うどん店を営む横川昌和さん(60)は嘆く。

 創業約70年。震災で店は全焼し、仮店舗を経て20年近く前に再開発ビルに移った。街の集客が低迷する一方で、高い固定費負担に苦しんできた。

 職住一体だった街では、商店主の多くが店も住居も奪われ、地元を離れざるを得なかった。日々の暮らしに追われる中、早期復興を図る行政との意思疎通は十分と言えなかった。ようやく戻った場所は、思い描いた姿とは大きく異なっていた。

 今、地区内には兵庫県と神戸市の合同庁舎や福祉関連など多様な施設ができた。半面、震災前と同程度の面積を確保した商業床は空きが多い。横川さんは「復興災害だ。商いの場という以前の姿がほとんどなくなっている」と話す。昨年末には、震災後も地域とともに歩んだダイエーが閉店した。

 遅々として進まなかった事業は2023年に完了する見通しだ。約20ヘクタールに及ぶ巨大再開発は、人口減少や消費行動の変化などの要因も、描いた未来を難しくした。神戸市の検証は、被災者の早期の生活再建や災害に強いまちづくりなどの「目的はおおむね達成できた」と評価する一方、「商店街としてのにぎわいに課題が残る」と総括した。

 再開発事業が完了すれば、形式的には「終わったこと」になるのかもしれない。それでも時代とともに移り変わるまちで、震災前と変わらぬ営みを続ける人たちがいる。

 17日、神戸・東遊園地の追悼会場には「忘」の文字が浮かび上がった。「忘れてはいけないこと」は、ここにもある。

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