日々小論

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 気鋭の作家・早見和真さんによる創作童話「かなしきデブ猫ちゃん」の連載が16日から始まる。クールで誇り高きオス猫マルが、兵庫五国を股にかけて冒険を繰り広げるという。

 マルの旅は2018年春、愛媛新聞紙上から出発した。新聞で童話を連載するのも珍しいが、さらに別の地方紙へ受け継がれるなんて例はないだろう。

 目指すは「県内全ての子どもが知る物語」。早い時期に読書に目覚め、共通の物語を持つ若者たちが育てば、その町の未来は豊かなものになるに違いない。実際、愛媛での連載は広く愛され、今年1月まで続いた。

 しかし、バトンを引き継ぐに当たっては懸念の声もあった。それは題名にもある「デブ」の一語だ。読む人を傷つけないか。いじめを助長するのでは…。作者とも話し合いを重ねた。

 早見さんは言う。「悪いのは『デブ』という言葉ではなく、『太っていることは恥ずかしい』という決めつけだ」と。でっぷりしたマルが勇敢に活躍する物語は、いわゆるルッキズム(外見至上主義)を含め、今の社会にはびこる思考停止状態への挑戦でもあるのだ。

 悪意で誰かをおとしめることはもちろん、無自覚に人を傷つける発言も許されない。だが、むしろ差別にあらがう目的で、覚悟を持って選んだ言葉まで封じるのはいかがなものか。

 そもそも「デブ」の語源には諸説あるが、元来は侮蔑的な意味合いはなかったようだ。マルの冒険譚(たん)には、言葉狩りや自主規制で痩せ細っていく日本語を救う役割も期待される。

 とはいえ、難しい理屈は抜きに、まずはマルの冒険を楽しんでほしい。胸躍る物語は必ず、異なる考え方や他者の痛みを知る想像力を育んでくれるから。

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