日々小論

  • 印刷

 「年を取ったからか、忙しかったからか。この5年ほどは、なんか早かったなあ」

 変わらぬ話しぶりに安心し、元気をいただいた。

 神戸市長田区で精肉店を営む吉田安夫さん(73)は、阪神・淡路大震災による火災で旧菅原市場に構えた店舗を失った。2000年、再起を懸けて市場の仲間と同じ建物で一緒に商売する共同スーパー「味彩館(あじさいかん)Sugahara」を設立した。

 その味彩館が完全に閉店したのは17年夏。仲間の店主が高齢化し、跡継ぎもおらず店を畳んだ。吉田さんは再建を図ろうとしたが、誘致したスーパーの進出計画が直前で頓挫した。

 震災後、同様の共同スーパーが兵庫県内に15ほど誕生した。生鮮や総菜など個店の力を結集し、大型チェーン店などと競合してきた歩みが岐路に立たされている。22年も「KONAN食彩館」(神戸市東灘区)や「食の工房みやまえ」(同市灘区)が歴史に幕を下ろした。高齢化や競争激化に加え、原材料費などの高騰がのしかかった。

 昔ながらの対面販売の良さが残る個店はチェーン店にはない強みがあるが、「閉店も時代の流れ」と吉田さん。「味彩館も年々、競争環境は厳しくなっていった。打開策は…なかなか浮かばんね」と言葉少なだ。

 震災を機に市場から形を変えた風景は、30年近くを経てさらに変わりつつある。選択を迫られる中、「生涯現役です」と語る吉田さんは跡地近くで営業を続ける。店舗奥の作業場で黙々と肉をさばき、売る。常連客がひっきりなしに訪れ、買い求める。半世紀近く続く日常だ。

 時代や形は変わろうとも、地域に根ざした変わらない商いがある。その営みに、ささやかながらエールを送りたい。

日々小論の最新
もっと見る
 

天気(10月27日)

  • 23℃
  • ---℃
  • 10%

  • 20℃
  • ---℃
  • 50%

  • 23℃
  • ---℃
  • 10%

  • 23℃
  • ---℃
  • 20%

お知らせ