宝塚歌劇花組公演が7日、宝塚大劇場(兵庫県宝塚市栄町1)で開幕する。1939年公開の時代劇映画を舞台化した「鴛鴦(おしどり)歌合戦」で、トップスター、柚香光(ゆずか・れい)が貧乏浪人に扮し、初めてという着流し姿での演技に挑戦する。「原作映画は今、見てもモダン。どんな舞台になるか、私自身がワクワクしている」と話す。
マキノ正博監督によるオリジナル作品で素浪人を演じたのが時代劇スターの片岡千恵蔵。ちょんまげの侍たちが軽やかに歌う、日本初のオペレッタ映画として歴史に名を残す。
宝塚の舞台でも、長屋住まいの貧乏浪人、礼三郎(柚香)と隣家で傘張りをなりわいとする浪人の娘、お春(星風=ほしかぜ=まどか)の恋のさや当てを軸に、骨董(こっとう)好きの殿様(永久輝=とわき=せあ)を巻き込み、ドタバタが繰り広げられるのは同じ。
「最初、『鴛鴦』が読めませんでした」と集まった記者を笑わせた柚香。演目に決まってから初めて映画を見たといい、「脚本、構成がすばらしい。曲も一度聞くとくせになる。完成度が高い」と評し、礼三郎を演じた千恵蔵についても「かっこよくて包容力があって、その上、抜け感がある」と絶賛。「出番は少ないが、出てきたときの存在感と色気。私自身、場面場面でどんな色を出せるかが、今回の作品での課題であり、ポイントになる」と演技プランを明かした。
着流しにげた履きといういでたちは「めっちゃ好きです。日本モノの芝居のよさを満喫しています」。どちらかというと女性に奥手という設定の礼三郎について「普段、女性をエスコートすることに慣れているので、彼の不器用な面を意識して演じている」そう。役作りを、形から入るのではなく「何を見て、どんな経緯で浪人になったのか、礼三郎の内側を掘り下げているところ」とも説明した。「肩の力を抜いて、口角を緩めて、『人生、ままならぬことはあるけれど、ま、仕方ないか』と、温かい気持ちで見てもらえる作品」とアピールする。
後半は岡田敬二作・演出の「GRAND MIRAGE(グラン・ミラージュ)!」。岡田が手がけるロマンチック・レビューシリーズの22作目となる。
「これぞ宝塚、という作品」と柚香。プロローグは娘役たちのダンスで始まるが、「娘役の美しさに、思わず写真を撮りたくなった」。所作の一つ一つ、立ち居振る舞いをいかに洗練させ、上質なものにしていくのか、その重要性を再認識しているという。ゆったりした動きが「『なんだかゆっくりだね』と思われるのか、あるいは『迫力あるエレガントさ』として感じてもらえるのか、変わるはず」
踊りにおける「宝塚らしさ」を長年、担ってきて、先月亡くなった振付家、羽山紀代美についての質問にも答えた。「思い出がありすぎて…。音楽学校時代からたくさんのことを教えていただいた」
今年1~3月、上演された「うたかたの恋」「アンシャントマン-華麗なる香水-」で振付を担った羽山。稽古を見て目に涙を浮かべ、「宝塚っていいところね」と両手を広げながら近づいてきて、ハグしてくれたという。「忘れられない思い出だったが、先生が亡くなられて、忘れてはいけない思い出になった」
今年は宝塚音楽学校創立110周年、そして来年は宝塚歌劇団創立110周年の節目を迎える。「常に学べる環境にいられるのが幸せ」と感謝を口にしながら「長年のファンの方々だけでなく、初めてご覧になる方にも『宝塚っていいところだね』と感じてもらえるような舞台を目指す」と新たな決意を語った。
7日から8月13日まで。9月2日~10月8日、東京宝塚劇場で上演。
(片岡達美)