2020年、兵庫県鞄工業組合の理事長に由利昇三郎氏(59)が就任する。06年に特許庁の地域団体商標に登録された豊岡鞄(かばん)の人気もあり、産地・豊岡の知名度は高まっていた。
城崎温泉を目的に豊岡市を訪れるインバウンド(訪日客)も、どんどん増えていました。その中で、かばんの価値をもっと高めようと、19年から、SDGs(持続可能な開発目標)の実現に向けた取り組みを検討し始めました。
廃棄された漁網を再利用して生地をつくる活動に全国の企業や団体が取り組んでいることを知り、参加することにしたんです。漁網を北海道で回収し、いったん粒状の原料にした上で糸に加工して生地を織る-というプロセス。最後にわれわれが、その生地でかばんを作り上げます。
成功すれば、海洋プラスチックごみの削減に貢献できる。通常の生地よりも高価にはなりますが、取り組みを始めると、豊岡のかばん業界への注目が高まりました。環境問題への意識が高い諸外国へのPRにもなると考えていました。
海外市場の開拓へ本格的に動きだそうというタイミングを迎えていた。その矢先に、新型コロナウイルス感染症の波が全世界に広がった。