大久保康彦さん、長男利裕さん、妻咲子さん。がれきの中で掲げた看板は今も店先にある=神戸市長田区若松町11

 震災から2カ月。神戸市長田区の鷹取商店街周辺はようやく整地が進もうとしていた。夜、被災した住民は避難所へ戻り、辺りは真っ暗になった。「お月さまもないんか思ったな」。ガラス店主だった大久保康彦さん(81)は振り返る。

仮設店舗の準備が進む大久保硝子店。店先に真新しい看板があった=1995年3月13日、神戸市長田区若松町11

 神戸市は区画整理事業の候補地に対し、住宅や店舗の建設に「待った」をかけた。ならばと大久保さんは周辺ではひときわ早く、コンテナの仮設店舗で商売を再開。壁に「生存してます」と張り紙をした。