50代、60代は家族のかたちに変化のある世代です。子どもが独立して住む人の減った家で、老後を見越してどう暮らしていくか。リフォームに詳しく、グッドデザイン賞など多くの受賞歴がある1級建築士の北川浩明さん(40)に、自宅を居心地のいい「ついのすみか」にするための心得を聞きました。
■「住まい方」の転換
-自宅をリフォームする「適齢期」はありますか。
「家族構成や暮らし方、健康状態、予算などいろんな要素が人によって異なるため、一概には言えません。ただ、子どもが就職や結婚で家を出ていく50代や60代は、一つのタイミングでしょう」
「その世代はまだ、今後の人生に十分な時間があります。子どもや老親と暮らす場だった家を、同居人数の変化に応じて住みやすく変えていくことで、日々の暮らしが楽になり、生活の質も上げられます。老後も見すえつつ、そこに至るまでのライフスタイルも充実させられるはずです」
-もっと高齢になってからリフォームに踏み切る人もいます。
「段差解消や滑りにくい床材への変更、トイレの便器交換など、住み慣れた家の部分的な改修ならそれでいいと思います。ただ『住まい方』の転換を伴うような規模のリフォームは、あまり高齢になってからでは難しいかもしれません」
■まずは行政窓口へ
-ネットや本には「リフォームの鉄則」といった情報があふれています。
「予算や計画の立て方、業者選びまで、注意すべきポイントはたくさんあります。リフォームを検討するなら、まずは行政が設けている住まいの相談窓口に行くのをお勧めします。住居の状況や居住者のニーズに応じた適切なリフォームができるよう、建築士ら専門家のアドバイスが受けられますよ」
-費用はどれくらい必要でしょうか。
「もちろん規模によります。ただ物価の高騰や円安により、リフォーム料金も上がっています。基礎に手を入れるような大がかりな工事だと1坪につき80万円かかることもあります。間取りを大きく変えない小幅なリフォームなら1坪20万~30万円もあり得ます」
理想の「ついのすみか」へ<2> 必須はバリアフリー、ワンフロア、○○性
理想の「ついのすみか」へ<3> 予算やスペックよりも大事なことは
【北川浩明(きたがわ・ひろあき)】1984年、神戸市生まれ。京都工芸繊維大学大学院を修了後、イタリアで6年間勤務。2018年、神戸市兵庫区に設計事務所「文化工学研究所」を設立。兵庫県建築士事務所協会の常任理事を務める。神戸市灘区在住。