■「隣がどんな人かも知らんかった」
「地域が燃えているのを、ただ見てただけやった」
カトリック三田教会(三田市屋敷町)の神田裕神父(66)は、阪神・淡路大震災から30年たった今も、ある後悔を抱えている。
地震後、神父をしていた神戸市長田区のカトリック鷹取教会(現たかとり教会)周辺で火災が起き、黒煙が徐々に迫ってきた。
付近の住民は「あの子おらへんで」と声をかけ合っていた。名前を呼び合いながら、火の手が回ってくる前にがれきの下敷きになった人を助け出そうとしていた。だが、神田さんがそこに加わることはなかった。頭は教会への延焼を防ぐことでいっぱいだった。
当時、後に社会を震撼(しんかん)させるオウム真理教のような新興宗教団体が勢力を伸ばし、世間からの宗教や教会への不信感を感じていた。近くに住む信徒も少なく、地域との接点自体があまりなかった。
「そもそも隣の人がどんな人かも知らんかった。普段から知っていたら『あの人どうなってんねん』と思えたはず」