少年事件記録破棄を巡る神戸新聞の紙面
少年事件記録破棄を巡る神戸新聞の紙面

 日本新聞協会は6日、2023年度の新聞協会賞を発表し、神戸新聞社の「神戸連続児童殺傷事件の全記録廃棄スクープと一連の報道」(「失われた事件記録」取材班 代表・編集局報道部デスク兼編集委員 霍見真一郎)など5件を選んだ。10月18日に長野県軽井沢町で開かれる第76回新聞大会で授賞式がある。

 神戸新聞社が新聞協会賞を受賞するのは、20年度の「教員間暴力のスクープと神戸の教育を巡る一連の報道」以来で、3年ぶり。

 神戸新聞は2022年10月20日付朝刊で、1997年の神戸連続児童殺傷事件で逮捕された当時14歳の「少年A」に関する全ての事件記録が廃棄されていた事実をスクープした。さらに、全国で重大少年事件の記録が機械的に廃棄されていた実態も明らかにし、専門家へのインタビューや連載企画で事件記録を適切に保存するよう訴えた。

 最高裁は今年5月、記録廃棄の責任を認めて謝罪し、第三者委員会を設置するなどの再発防止策を講じるとした。

 同協会は一連の報道について「国民の共有財産としての事件記録の意味を問い続け、最高裁の謝罪を引き出すとともに記録保存制度の改善に道筋をつけた」と評価。その上で、「埋もれていた事実を掘り起こし、司法の認識の甘さを改めさせた調査報道として高く評価される」と意義づけた。

 23年度新聞協会賞は50社98件の応募があった。ほかの受賞は次の通り。

 「海外臓器売買・あっせん」を巡る一連のスクープ(読売新聞東京本社)▽「伝えていかねば」沖縄・渡嘉敷島 集団自決の生存者(毎日新聞社)▽「精神科病院で患者虐待や高い死亡退院率」の一連のスクープと調査報道(日本放送協会)▽人権新時代(西日本新聞社)

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 神戸新聞社の編集関連の受賞は、20年度の教員間暴力と神戸の教育を巡る報道や、阪神・淡路大震災10年キャンペーン「守れ いのちを」(05年度)のほか、京都新聞社との合同震災企画「生きる」(1995年度)、「淡路における住民参加の共同社会開発」(65年度)がある。

■特集サイト■失われた事件記録 神戸連続児童殺傷事件の現地から