日本新聞協会主催の第76回新聞大会が18日、長野県軽井沢町のホテルで開かれた。交流サイト(SNS)や生成人工知能(AI)の利便性向上と危険性に触れ、「正確な報道と公正な論評を届け続け、健全な言論空間を守り育てる」とする大会決議を採択。2023年度の新聞協会賞の授賞式を行い、神戸新聞社の「神戸連続児童殺傷事件の全記録廃棄スクープと一連の報道」など6件が表彰された。
【特集ページ】失われた事件記録
大会には新聞、通信、放送各社の代表者ら約380人が参加。開催地の信濃毎日新聞社の小坂壮太郎社長が冒頭、「業界内の課題を乗り越えるため、連携の重要さを改めて確認する場にしたい」とあいさつ。同協会の中村史郎会長(朝日新聞社社長)は生成AIのリスクに触れ、活発な情報共有や意見交換を呼びかけた。
新聞協会賞を受賞した神戸新聞は22年10月20日付朝刊で、1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件の全ての記録が廃棄されていた事実をスクープ。全国の重大少年事件でも記録が廃棄されていた実態も続報し、連載企画などで適切な保存を訴えた。
最高裁は今年5月、廃棄の責任を認めて謝罪し、第三者委員会を設置するなどの再発防止策を講じると表明。同協会は「国民の共有財産としての事件記録の意味を問い続け、最高裁の謝罪を引き出すとともに記録保存制度の改善に道筋をつけた」と評した。
授賞式で取材班代表の霍見真一郎・報道部デスク兼編集委員は「事件記録の意義を問い続けた1年だった。取材を進め、廃棄はミスではなく、システムだったと分かった」と振り返った。地元の高校生による受賞者への公開インタビューやパネル討議などもあった。(末永陽子)
他の受賞は次の通り。
【新聞協会賞】「海外臓器売買・あっせん」を巡る一連のスクープ(読売新聞東京本社)▽「伝えていかねば」沖縄・渡嘉敷島 集団自決の生存者(毎日新聞社)▽「精神科病院で患者虐待や高い死亡退院率」の一連のスクープと調査報道(日本放送協会)▽人権新時代(西日本新聞社)
【新聞技術賞】ブランケット復活装置の開発(朝日新聞社)