ルッキズムを巡るアンケートへの回答から抽出したキーワード
ルッキズムを巡るアンケートへの回答から抽出したキーワード

 ルッキズムという言葉が広がっています。外見に基づく差別や偏見のこと。最近では「見た目で人を判断すること」「容姿に言及すること」など多面的な文脈で使われています。ルッキズムに対する考えや容姿を巡る体験談をアンケートで募ると、さまざまな回答が寄せられました。その中からいくつか紹介します。※回答は一部要約、省略しています。ご意見や体験談は、随時こちらで募っています。

□娘と2人だけの秘密 (40代女性)

娘が小学6年の夏休みに一重から二重の美容整形を受けさせました。周りは大反対だと予想できたので娘と2人だけの秘密です。手術後、娘は明るくなりメガネをコンタクトに変えてよく笑うようになりました。外見より中身と言いますが、外見が変わってつく自信もあると思います。

□色白、髪や瞳は茶色 (40代女性)

今では笑い話ですが、小学生・中学生の頃、色が白くて髪や瞳が茶色かったので、上級生に呼び出されたり、同級生の男子や知らない人から「外人」「ロシア人」とからかわれたりしました。友達は逆に色黒だったので「マレー人」と言われて、泣いていことをよく覚えています。

□この見た目で生きるしか (50代女性)

私は見た目問題当事者です。その容姿が原因で小中の6年間いじめられ続けました。中学の頃は「自分が死ぬか、あいつらの髪に火をつけてやるか」と思い詰めていました。どちらもしませんでしたが。人にジロジロ見られたり赤の他人に失礼なことを言われるのも日常でしたし、就職差別で泣いたこともあります。なので自分の容姿で好きなところはありません。受け止め方・向き合い方ですが「自分のせいでこの見た目になったわけではないのに、なぜこんな目にあわなきゃいけないの?!」という気持ちがあまりにも強く、その怒りを原動力に生きてきたので、自己肯定感が低くなったり自虐的になったりはしませんでした。受け入れるも何も、向き合うも何も、ただただこの見た目で生きるしかないんだから。ルッキズムという言葉が広がり、学校での教育もいいのか、最近は道や公共交通機関で辛くなるような目にあわなくなり、昔に比べだいぶ生きやすくなりました。一方、美容整形を肯定的に報じるメディアが増え、美しくないなら美しくすればいいというような考えが増えているようにも感じて、すごく矛盾しているなぁと思います。

□ネットの罵詈雑言 (30代女性)

子どもの頃にいじめにあった中で覚えてるのは、見た目に関する言葉の嫌がらせでした。自分の見た目にコンプレックスを抱いた時期もありましたが、化粧やおしゃれをするようになってからはそれも解消されました。今一番ひどいと思うのは、ネットにあふれるルッキズムの罵詈雑言だと思います。実生活ではそういうものに出くわすことはほぼありません。

□異性にモテすぎて (50代女性)

いつもかわいいかわいいと言われ、異性にモテすぎて、家に電話がかかってきたり待ち伏せされたり。不倫のお誘いや、彼女がいるのに付き合いたいなどと言われ、かなり迷惑をした。腰のくびれとお尻のバランスが良いのか、性的な目で見られるのも苦痛。しゃべっていると唇を見つめ男性がとろーんとした目になるのも気持ち悪かった。

□もう疲れました (40代女性)

物心ついたときから好きではありません。顔もスタイルも何ひとつ自信がありません。乳児の頃からアトピーもあるため、肌もキレイとは言えません。アトピーがひどいときは化粧もできず、職場の年配女性には「化粧もしないの?」「乳液やクリームくらいつけてき、恥ずかしい」などと小ばかにされることもありました。胸が小さいと同僚女子にからかわれたりすることも多く、自然と猫背になりがちでした。幼稚園・小学校などで一緒になったママの一部には、見た目で自分より上か下かを決め、見下し哀れむかのように接する人もいます。同性間の方が一線を越えて、見下すように思います…。同性なら何でも言ってもOKな感覚で。20年近くまともに写真も撮っていません。かわいそうかもしれませんが、わが子とのツーショットなどほぼありません。コロナ禍でマスク生活となり、マスク着用が当たり前になったおかげで、写真も少しは撮れるようになりました。マスクがなくなると困ります。両親・弟は美男美女と言われるような外見ですが、自分は比べて見劣りします。若い頃はそれなりにがんばってカワイイを目指したり、下着や靴などで少しでもスタイルを良く見せようとしたり、時間とお金をかけていたと思います。自分基準にならず、他人基準で比較すること・されることに疲れました。自分の顔・姿は、自分で見るより見られる方が断然多いですから、仕方ないのかもしれませんが。

□薬の副作用で(40代女性)

先日久しぶりに会った80代の叔父から一言目に「太ったな」と言われました。不快な思いを忘れられずにいます。私は病気のため、飲んだ薬で2回に渡り体重増加の副作用が出ました。叔父には、世の中には薬の副作用によって容姿の変化を余儀なくされて困っている人もいるのだと、そのつど話しているのですが…。コミュニケーションの手段がセクハラ、ルッキズムが標準化しているようで、止めようとはしません。人間いくつになろうと、生きている以上は時代の価値観に合わせて生きていくほかありません。これから高齢者福祉や施設のお世話になる予定でありながら、わざわざ嫌われるようなコミュニケーションを取ろうとしていることに気がついてほしいと思います。今の時代に容姿をやゆして好かれることは、ほぼいないと思います。叔父自身のためにも、どうにか理解を深め、楽しく福祉や施設利用をしてほしいと思います。私のような不快な思いを身内でも許さないのに、他人が許すはずありません。

□本気で整形したかったけど (40代女性)

一重で鼻が低いところがコンプレックス。若い頃は本気で整形したいと思っていましたが、今は全然気にしなくなりました。息子は私に似ているのですが、すごく見た目を気にしています。ほんとに自分の顔が嫌いです。マスクもしなくてよくなっても、絶対に取りません。

□気持ちの良い世の中に (10代男性)

ルッキズムはある種の偏見だと思う。人間関係を築くうえでは視野が狭くなり、その人や自分を傷つけることもある。しかし使い方次第であって、最初に関係を築く時に、見た目で特徴的な部分を取り上げて会話をつくっていくこともある。関係を築く以前に「この人は避けた方がいい」と自分を守るために使うこともある。個人の意見としては、表に出すことをしてはいけない。思考の中でなるべくそれに引っ張られることなく、表に出す言葉がまっすぐ吐けたら理想である。人は視覚情報が8割というので、見た目から印象を受けてしまうのは仕方のないことだが、それに気付いて修正できるようになればもう少し気持ちの良い世の中になると思う。ルッキズムの対象が自分に向かっていなくても、その発言を聞いてしまえば嫌な気分になるので、自身の口から出ないようにこれからも気をつけようと思う。

□いじりとツッコミ (30代男性)

少しアゴが出ており、社会人になったくらいから先輩から「シャクレ」としてイジられるようになりました。当然嫌な気持ちになりますが、なんとかそのつどツッコミを入れながら受け流しています。ツッコミながら受け流す自分を見て、それでイジる人が増えている気もするので、対処のしように悩みます。

□顔も体形も気に入っているけど (60代女性)

中学生の時にクラスメートの男子から洗濯板と言われ、ずっとコンプレックスになっています。当時は痩せてたのが原因だと思いますが、今ではサイズ的にも洗濯板とはほど遠いと感じています。手足が細長く顔も体形も自分でも気に入ってますが、当時の言葉が頭から離れません。

□面接で「動けますか?」 (40代女性)

私は太っています。就職活動では苦労しました。事務の面接であっても「動けますか?」と聞かれます。本当に毎日一万歩を歩いていて、その旨を伝えたところで鼻で笑われます。男性の面接官にいたっては、きれいとかカワイイ女性ばかりに質問や雑談をします。いわゆる不細工とか太っている(自分の好みでない)人にはあからさまに無視をする方もいました。就職をしたところで、上記に書いたように容姿の順でお茶や食事に誘われる→給料UP、みないなことがたくさんあります。結局、痩せようと思っても仕事内容も差別化される→イライラして食べる、といった悪循環になります。恋愛感情も何もない方から急に「〇〇さんが痩せてたら良かったのに~」とか言われ、男性に対して幻滅しました。結果、性格より外見が大切だと思います。

すがたかたち ルッキズムを考える