吉岡千恵美さん(左)と夫の眞治さん。震災の半年前に結婚したばかりだった
吉岡千恵美さん(左)と夫の眞治さん。震災の半年前に結婚したばかりだった

 「こうやってな、仏壇に手を合わせて毎日話しかけてんねん。千恵美さん、ここがあんたの家やで。お義母(かあ)さんが一緒におるから、もう大丈夫やでって」

 そう語る吉岡君江さん(82)=神戸市北区=は、阪神・淡路大震災で長男の眞治さん=当時(29)、千恵美さん=同(26)=夫婦を亡くした。2人が住んでいた同市灘区のマンションは全壊。駆けつけたときにはもう、助けるすべはなかった。半年前の夏に結婚したばかりで、千恵美さんのおなかにはまだ性別も分からない赤ちゃんがいた。

 夫婦は2人とも神戸市立小学校の教諭。震災当時、眞治さんは兵庫区の鵯越小(現夢野の丘小)5年、千恵美さんは東灘区の福池小3年の担任だった。

 人懐っこい眞治さんは同僚や友人にも恵まれ、震災後も毎年のように君江さん宅を訪ねる人が絶えない。教え子の中には、君江さんを結婚式に招いてくれたり、母の日にカーネーションを欠かさず贈ってくれたりする人もいるほどだ。