参院選兵庫選挙区で、日本維新の会は逆風にさらされた。2019年の前回選、22年の前々回選は公認候補がトップ当選したが、昨年の兵庫県の告発文書問題を巡る対応などが批判を受け、党勢が低迷。その影響を引きずり、厳しい選挙戦となった。
■兵庫は「最重要選挙区」
「厳しい選挙です。何とか前を走る自民党をつかまえられるところまで来た。皆さんの1票を吉平さんに託してください」
選挙戦最終日の今月19日、神戸・三宮のサンキタ広場。維新の吉村洋文代表(50)は、党公認候補の新人、吉平敏孝氏(44)と並んで声を張り上げた。
吉村氏が兵庫入りするのは、この日で公示後7度目。13~16日は4日連続で訪れた。本拠地の大阪でも他党の候補者の伸長が伝えられる中で、異例の行動だった。
兵庫は党の「最重要選挙区」。岩谷良平幹事長は「吉村代表の『勝負の兵庫にかける』という思いだ。大阪も厳しいが、吉村代表は自分の力は兵庫に集中し、勝てる可能性にかけたいという決意があった」と明かした。
■前回選は比例得票でもトップ
維新が兵庫選挙区に初挑戦したのは、2013年だった。
この時は、元民放アナウンサーの清水貴之氏が初当選した。
16年には元NHK記者の片山大介氏を擁立し、3番目の得票で議席を獲得した。
19年には清水氏が約57万票を獲得し、自民党、公明党の候補者を抑えてトップで再選した。
22年には、片山氏は約65万票を得て、トップ当選した。
大阪府知事として新型コロナウイルス対策で注目を浴びた吉村氏への人気を追い風に、比例でも、兵庫では自民を上回るトップの約64万票を獲得した。
■告発文書問題への対応に批判
しかし24年、兵庫県の告発文書問題を巡る県議会会派の対応などが批判を招き、党勢は傾き始める。
同年11月の県知事選では、今回の参院選で改選を迎えるはずだった清水貴之氏が、くら替え立候補したが、大敗した。
その後、清水氏は参院選兵庫選挙区での公認が内定していたが、最終的には体調不良を理由に断念した。
党は地元、淡路島の洲本市出身で、24年の衆院選で東京3区に立候補した元三菱商事社員の吉平氏を擁立した。
逆風の中で迎えた参院選では、大阪から選挙経験の豊富なベテラン府議らを送り込むなど、党を挙げて吉平氏を支援した。
吉平氏は知名度不足を補うように、精力的に活動。連日のように各地で個人演説会を開くなど、風頼みの「空中戦」ではなく、地に足を付けた選挙戦を展開した。
報道機関などの情勢調査で苦戦が伝えられると、吉村氏は13日から4日連続、兵庫入りして街頭演説。最終盤の18、19日も2日連続で来援した。
神戸、阪神間など主に都市部でマイクを握り、公約に掲げる社会保障制度改革などを主張。数百人が集まることもあり、吉村氏への高い人気がうかがえた。
■「今の維新は応援できない」
吉平氏は、社会保険料の負担を下げる必要性を主張。「子どもたちの未来のために、改革に取り組んでいく」と声を張り上げた。
選挙戦では、有権者から斎藤元彦知事の兵庫県政に対する姿勢を問われ、「これまで応援していたけど、今の維新は応援できない」と言われることもあった。個人演説会でも、参加者から県政のことを聞かれることがあったという。
吉平氏は終盤、演説で兵庫県政に対する姿勢にも言及するようになり、「私は斎藤知事の政策を是々非々で支持している。県政を前に進めるための橋渡し役をさせてください」と強調していた。
5年前に妻をがんで亡くした吉平氏は、小学生の子ども2人を育てており、病児保育制度の充実なども訴えた。
「亡くなった妻に、しっかりと仕事をしたと墓前で報告できるように、仕事を与えてください」と呼びかけた。
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