診察をする小児科医=豊岡市戸牧、公立豊岡病院
診察をする小児科医=豊岡市戸牧、公立豊岡病院

 但馬圏域は、東京都とほぼ同じ面積がある一方、人口は約14万5千人。高齢化率は4割に近く、社会構造の課題を先取りしている地域でもある。

 圏域最大の公立豊岡病院(528床)は、神戸新聞の経営実態アンケートに、「絶望的な状況」と書いた。2024年度の経常赤字額は8億6400万円。病院幹部は、危機感を地域住民と共有できていないことに問題意識を持っていた。

 三輪聡一院長は、医師偏在を背景に、「都市部に比べ人材確保に要する費用が高くつく」と、地域の事情を訴えた。同病院は、地域医療の屋台骨を支えるため、救急や産婦人科、小児科など一般的に不採算とされる部門を多数抱えている。

診察をする小児科医=豊岡市戸牧、公立豊岡病院

 小児科で入院できる病院は、但馬でここだけだ。24年における同科の入院患者(実数)は、わずか305人。新たに入院するのは1日平均1人にも満たないものの、熱性けいれん患者が40人含まれるなど、緊急性の高い疾患の子どもも多い。診察や宿直勤務を回すため、常勤医が7人おり、行政の補助金を入れても1億円以上の赤字を生む診療科だが、病院は「地域に不可欠であり、守り続ける」と力を込める。

 ただ、運営する公立豊岡病院組合の八木聰管理者は「住民にとって、病院はあって当たり前の存在。赤字と報道されても、何とかなるのではないかという意識では」と厳しい表情を見せた。「そこに一歩踏み込んで状況を理解してもらう努力は必要だと思う」