兵庫県の斎藤元彦知事を訪ね、自身が理事を務める法人の活動を報告する岡崎慎司=6月、兵庫県庁

 サッカーの元日本代表FW岡崎慎司(37)=シントトロイデン、兵庫県宝塚市出身=が、日本サッカー界の構造改革とも呼べる取り組みに挑んでいる。Jリーグを経由しない欧州挑戦、環境配慮型グラウンドの普及。「新しい文化、道をつくる」と未来を描く。

 ワールドカップ(W杯)に過去3大会連続で出場した岡崎は2011年から欧州4カ国を渡り歩く。そこで培った知見を生かし、母校の滝川第二高OBら同志とともに、ドイツ6部のバサラマインツ、関西1部のバサラ兵庫を運営している。

■岡崎ルート

 バサラマインツ、兵庫とも「育成型」を掲げる。今春、岡崎は育成制度を学ぶために欧州各国を巡り、特にオーストリアに刺激を受けた。

 「フィロソフィー(哲学)は23、24歳までにいかに成長させて出していくか。若手を育て、海外に行かせる土壌をつくらないといけない」

 欧州の強豪リーグに人材を送り出すオーストリアの思想。日本サッカーの発展を第一に考え、Jリーグにこだわらずに本場を目指す自身のコンセプトに確信を得た。

 そのための環境も着々と整えている。今年4月、バサラマインツと通信制高校のクラーク三宮が連携し、同校に語学も学べるサッカーコースを開設。1、2年生約20人を迎え、24年度からはバサラ兵庫U-18として傘下に収め、本人の意欲と海外適性を見極めながらバサラマインツに送り出す計画だ。

 自身の経験から、この「岡崎ルート」こそ海外志向の選手にとって最適な順路になるという。

 「海外はどうしても『日本人はこう』とイメージ先行になることが多く(自身の強みなどを)認識されるまでに時間がかかる。僕らのバサラマインツなら、そういったハードルがない」

 実際、バサラマインツはドイツ9部のセカンドチームを含めて選手約50人のうち2割ほどが日本人。スタメン争いは当然としてあるが、邦人に理解があるクラブを第1ステップとして勝ち抜けば、その先は明るい。

■兵庫モデル

 クラブ運営の範囲は施設面にも及ぶ。神戸市西区に開いたグラウンド「バサラヴィレッジグリーン(BVG)」は環境配慮を打ち出し、人工芝の下にためた雨水の蒸気で高温化を防ぐ。部材もリサイクル品だ。

 環境優先の考え方は欧州で当たり前といい、BVGのシステムも、オランダから取り寄せた。今後、兵庫県と結ぶ連携協定にもシステム普及について盛り込まれる予定で、岡崎は「兵庫モデル」としての発信を目指す。

 「兵庫県をスポーツで打ち出すのなら、他がやっていないことをやっていくべきだと思う。(環境問題の)解決策にもなるし、一緒にチャレンジしたい」と熱い。Jリーグ初代チェアマンの川淵三郎さん(86)の後押しも得ているという。

 「選手育成もグラウンドも僕らは攻めていく。最終的にはヨーロッパを超えることが一番の目標なんで」

 代名詞のダイビングヘッドのように、岡崎はクラブ経営でも思い切って前例のない世界へ飛び込む。(有島弘記)