加古川観光大使に就任した、いとうのいぢさん。加古川市をイメージしたキャラクターの名前を「かこのちゃん」と発表した=加古川総合文化センター
加古川観光大使に就任した、いとうのいぢさん。加古川市をイメージしたキャラクターの名前を「かこのちゃん」と発表した=加古川総合文化センター

 人気ライトノベル「涼宮ハルヒ」シリーズなどの挿絵を手がけるイラストレーター、いとうのいぢさん=兵庫県加古川市出身=が21日、加古川観光大使に就任した。ファンを集めたイラスト描き方講座では、自身の制作工程も紹介し、「しんどい作業なので、楽しんでないと絵なんて描いていられない」と仕事に臨む心境を明かした。

 いとうさんは累計発行部数2千万部超の「涼宮ハルヒ」シリーズや、同850万部を超える「灼眼のシャナ」などのイラストを手がける。加古川総合文化センター(同市平岡町新在家)で、地元で初の個展「いとうのいぢ展 ぜんぶ!」が9月3日まで開催中。

 同センターで開かれた観光大使の委嘱式では、加古川市をイメージして描き下ろした少女のキャラクターについて、名前を発表。展示会場やネットで募集し、応募316点の中から、「かこのちゃん」を選んだことを紹介した。

 いとうさんは「家で陰気に絵を描いていた人間だったが、観光大使に任命してもらい、すごくありがたい。少しでも加古川の良さを発信したい」と話した。

 式典後の講座では、ファンら55人を前に、スクリーンにイラストを映しながら、制作に当たって心がけていることなどを説明。参加者の描いたイラストにも助言していた。

いとうのいぢさん イラスト制作工程を紹介「楽しんでないと描いていられない」 

 人気ライトノベル「涼宮ハルヒ」「灼眼(しゃくがん)のシャナ」などの挿絵を手がけるイラストレーター、いとうのいぢさん=加古川市出身=が21日、加古川観光大使に就任した。委嘱式後には、ファンを集めたイラスト描き方講座が開かれ、その中で自身の制作工程を紹介した。

 司会者の質問に答える形で、講座で話した主な内容は次の通り。

-加古川市をイメージしたオリジナルキャラクターはどのように描いたのか。

 「私の場合は、イラストに入れたいものをラフ画に文字で書き込むことが多い。加古川にゆかりのあるキーワードを書き出して、どう反映させるかをラフ画で考える。そのラフ画に1週間くらいかかった」

-キャラクターの作り方は?

 「キャラクターは性格から決める。例えば『元気』『音楽が好き』と想像して、だったらジャージーでスニーカーかなと。女の子の性格を勝手に決めて、絵に反映させていくのが私のキャラクターデザイン」

-ライトノベルなどの作家とは、どのようにやりとりをしている?

 「『涼宮ハルヒ』『灼眼のシャナ』は、ビジュアルはほとんど任せてもらって、やりたいように描かせてもらった。挿絵は編集者から『このシーンで』と割り当ててもらうけれど、話を読んでいて『ここのシーンはあった方がいいんじゃないですか』と、編集者とやりとりすることもある」

 「小説の挿絵で、例えば『私服で』とざっくりした指定があった場合は、『こういう洋服はどうですか』と提案する。私がやりとりしている作家さんは、ほとんどやりたいようにやらせてくれている」

-キャラクターを描くに当たって参考にしていることは?

 「キャラクターの顔、外観などは、いろんなところにヒントがある。テレビや街角など、目に入る全ての情報を使いたいと思っている。これまで出会った人からヒントを得て描くことも多い」

-自身の絵柄の変化についてはどう考えている?

 「私自身はすごくミーハーなので、はやり物とかは、読者視点で見て、すぐに取り入れる。それでも、独自の絵からは離れられない。どんなにまねをしても、まねをし切れない」

 「ただ、古いままではいやだなというのは、すごくある。『ハルヒ』『シャナ』を描いていた10年前、20年前の頃のままでは楽しくない。流行に追随するというよりは、こういうテイストは自分の絵に入れたらおもしろいというのを入れ込むなど、自分が楽しんで描くことを心がけている。しんどい作業なので、楽しんでいないと、絵なんて描いていられない」

-楽しいと感じる瞬間、つらいと感じる瞬間は?

 「ラフ画を描く段階は楽しいけれど、色を塗り込んでいくところは苦痛。色を決めて、(最終的に)見られるイラストになるまでにはすごく時間がかかる。影一つでも、1色で見せるんじゃなくて、いろんな色の濃淡を加えながら入れていく」

 「レイヤー(色の階層)が100枚を超えるのはざら。とにかく細分化して、肌とか髪の毛とかパーツそれぞれにレイヤーがあって、修正依頼がきたら修正できるようにしている」

-しんどいと感じた時の気持ちの切り替え方は?

 「イラストが仕上がるまでは、息を止めて描いているような感じ。『仕上がるまでは遊ばない』という気持ちでやっている。どうしてもしんどいときは、睡眠をとる」

-これから取り組みたいことは?

 「私は女性の絵を描くのが好きなので、使ったことのない画材を使って、美人画の連作を描いてみたい」(斉藤正志)

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 加古川総合文化センター(同市平岡町新在家)で、地元で初の個展「いとうのいぢ展 ぜんぶ!」が9月3日まで開催中。