記者会見するポーランド政府のマルタ・ジェリンスカ副代表=8月、大阪市此花区の夢洲
 記者会見するポーランド政府のマルタ・ジェリンスカ副代表=8月、大阪市此花区の夢洲

 大阪・関西万博でポーランドの誇る偉大な「ピアノの詩人」の業績や生涯を紹介する「ショパンウイーク」が開催され、ショパン作品の演奏が披露されたほか、ポーランド館ではショパンの直筆楽譜の原本など貴重な資料が公開された。(取材・文 共同通信=伊藤光雪)

 万博会場内のアリーナでは、ショパンの楽曲を交響的にアレンジし、ポーランド語の歌詞をつけた、他に例を見ないプロジェクト「繊細な弦」の公演が開かれた。聞きなじみのあるショパンのフレーズに歌詞が乗ることで新鮮に響く、その大胆な試みに観客らは興味深く聞き入った。

 万博会場のシンボルの一つ、EXPOホールで行われたコンサートでは、ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団や、前回のショパン国際ピアノコンクールで6位に入賞した小林愛実、今年10月に開催されるショパンコンクールで審査員を務めるピアニストのクシシュトフ・ヤブウォンスキらが登場し、多くの注目を浴びた。ピアノ協奏曲第1番や第2番が演奏され、管弦楽団の柔らかな音に、小林の力強くも繊細なピアノの音色が踊り、豊かなハーモニーで会場が包まれた。

 ショパンウイーク限定のポーランド館の特別展示も注目を集めた。ショパンが現在のポーランド国歌を編曲した直筆の楽譜や、14歳の時に家族に宛てた手紙などを一目見ようと、多くの人々が足を運んだ。

 「偉大な作曲家としてだけでなく、一人の人間として過ごしたショパンの人生を知ってほしい」と話すのは、ポーランド政府のマルタ・ジェリンスカ副代表。ショパンの音楽は多種多様で、人生のさまざまな局面が影響した感情的な作品が多いと話す。

 マルタ副代表は、日本ではあまり知られていないショパンの一面として、生涯を通じて3人の女性を愛したことを挙げる。女性の存在がさまざまな作品を生み出す原動力になっていて、中でもフランスの作家ジョルジュ・サンドが最も大きな芸術的影響を与えたという。

 また、パリに長く暮らし、生涯を通して抱いたポーランドへの郷愁がメロディーに感じられること、若くに肺を患ったことも作品に深みが帯びる要素の一つだと説明。「非常にさまざまな感情を抱えて一生を過ごした人。多角的に見ることで、ショパンの作品への理解も深まるのではないか」と話した。

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 「クレッシェンド!」は、若手実力派ピアニストが次々と登場して活気づく日本のクラシック音楽界を中心に、ピアノの魅力を伝える共同通信の特集企画です。