神戸空港が4月18日に国際化され、韓国、中国、台湾との間に計週40往復の国際チャーター便が飛ぶ。「第2の開港」にあたり、世界的な高級和牛ブランド「神戸ビーフ」の魅力を訪日客にアピールするのは兵庫にとって重要な課題になる。
神戸ビーフは、江戸時代末期の開港を契機に広まった。但馬地域で血統を100年以上管理している但馬牛の枝肉のうち、霜降り度や肉質が特に優れたものだけが認定されている。
神戸肉流通推進協議会が指定登録し神戸ビーフを扱う店舗は2024年7月末で1089にのぼる。約半数は海外店で、輸出先も42カ国・地域に増えたが、今回国際便が就航する韓国と中国は含まれない。兵庫県とつながりが深い両国からの訪日客にPRすれば消費量増加も期待できるだろう。
草原への放牧や牛ふん堆肥を田畑に還元するなどの飼育システムは世界農業遺産に選ばれている。JR新神戸駅前の「神戸ビーフ館」や新温泉町の「但馬牛博物館」などもある。訪日客が産地に足を運び豊かな自然や飼育風景に触れてもらうなど、世界に知られた神戸ビーフのブランド力を地域活性化にも生かす発想が求められる。
気がかりなのは、但馬牛の繁殖雌牛の数が21年度から3年連続で減っている点だ。需要が高まっても十分に対応できない可能性が否めない。新型コロナウイルス禍で落ち込んだ但馬牛の枝肉価格は現在、過去最高まで急騰しているが、供給が追いつかない事情も背景にある。
県畜産課によると、繁殖農家は70歳以上が半数と高齢化が進んでいる上、輸入飼料の高騰などで経営環境は厳しい。牛舎整備や雌牛導入への補助金、新規参入希望者の相談窓口設置などの支援策を講じているが、日常の食には縁遠い高級食材だけに担い手不足の現状が県民に伝わっているとは言い難い。
但馬牛は但馬や淡路を中心に県内全域で飼育されており、観光や飲食も含め経済効果は大きい。世界に誇るブランドを抱える兵庫・神戸の存在感を高めるためにも、空港国際化を好機ととらえて畜産農家への支援を手厚くし、牛の増産を軌道に乗せたい。