イランとイスラエルの戦闘は1週間たっても収束の兆しが見えない。それどころか超大国の振る舞いが緊張をいっそう高めている。あまりに無分別と言わざるを得ない。
トランプ米大統領は19日、イラン攻撃に加わるかどうか「2週間以内に決める」と表明した。核開発を放棄しなければ地下核施設を破壊する方針という。すでに攻撃計画を承認し、軍備を進めているとされる。
イランの最高指導者ハメネイ師は「取り返しのつかない損害をもたらす」と警告する。もし米国が参戦すれば中東にある米軍施設への反撃を招き、周辺国を巻き込んだ全面戦争に発展しかねない。米国はただちに不介入を表明し、国際社会と連携して早期の停戦を図るべきだ。
トランプ氏は、ハメネイ師の居場所を把握していると交流サイト(SNS)で発信し、殺害の可能性も否定しない。脅迫的な言動はかえってイランの核兵器開発を加速させる恐れがある。
そもそもイスラエルが仕掛けた今回の攻撃は、国際法違反の疑いが濃厚だ。イスラエルは「核兵器開発の差し迫った脅威があった」と主張するが、明確な根拠は示していない。誤った情報に基づき米国主導で開戦した2003年のイラク戦争の二の舞いは避けねばならない。
米国はまずはイランとの核協議を再開させ、合意を図る努力が求められる。イランも「平和的な核利用」を主張するならば、国際社会が納得できる説明を尽くす必要がある。
一方、イスラエルも核兵器の開発、所持が確実視されているが、公表を拒み、核拡散防止条約(NPT)にも加盟していない。他国の脅威のみあげつらい、戦力で優位に立とうとする姿勢は身勝手に過ぎる。国際原子力機関(IAEA)などの査察を受け入れてもらいたい。
米国以外の先進国の責任も重い。今月カナダで開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)の共同声明は、イスラエル擁護の姿勢が際立った。関税交渉中の米国の意向におもねったとすれば、G7の役割を放棄したに等しい。
欧米はパレスチナ自治区ガザでの人道危機に対しても、イスラエルに強い姿勢を打ち出せなかった。一連の対応がイランのイスラエル敵視を強めたと言える。
石破茂首相の姿勢も一貫性を欠いている。攻撃開始時は「到底容認できない」とイスラエルを強く非難したが、サミット後は安全保障を理由に支持し、イラン批判に転じた。
日本は唯一の戦争被爆国であり、イスラム諸国とも友好関係を築いてきた。緊張緩和に向け、核協議を積極的に後押しすべきである。