気象庁は7月の日本の平均気温が1898年の統計開始以降で最高だったと発表した。平年を2・89度も上回り、2024年(プラス2・16度)の最高記録を大幅に更新した。丹波市では同30日に国内史上1位となる41・2度を観測した。国内の40度以上は同日から4日間続き、8月4日も石川県で40度を超えた。異常な暑さと言うほかないが、災害級の高温が日常になりつつあると受け止めざるを得ない。
高温を招いた要因の一つは、日本を覆う二重の高気圧だった。気象庁によると、ユーラシア大陸の上空1万5千メートル付近にある「チベット高気圧」が張り出し、上空6千メートル付近の「太平洋高気圧」と重なった。晴れて日射量が増え、地表付近の空気が圧縮されて熱が生まれたという。
ただ、猛暑は近年の特徴だ。最高気温の歴代20位(40・4度以上)を見ると、9割以上が2000年以降に観測された。専門家は地球温暖化による大気全体の温度の底上げが影響しているとみる。今夏は欧州各地も記録的熱波に見舞われるなど、世界が気候危機に直面しているとの認識を強める必要がある。
国内では高温に加え、深刻な少雨となっている。7月の東北日本海側と北陸の降水量は、統計がある1946年以降で最少だった。兵庫県内では豊岡市の同月の降水量が平年の1割しかなく、統計のある18年以降で2番目に少なかった。西脇市や丹波市も3割にとどまっている。
懸念されるのは、農業などへの影響だ。農家からは「水不足はコメの収穫量の減少につながる」と悲鳴が上がる。全国でダムの貯水率が下がり、県内でも取水制限などの特別態勢を敷く。抜本的な改善は降雨を待つしかないが、自治体などは可能な対策を進めてもらいたい。
気象庁は沖縄・奄美を除き、8月も平年より気温が高くなると予想している。まず必要な対応は熱中症の予防だ。7月下旬までに全国の搬送者数は4万人を超えた。65歳以上が6割を占め、室内での発症も目立つ。エアコンの利用をためらわず、早めの水分補給にも気をつけたい。
きょう甲子園球場で開幕する全国高校野球選手権大会では、暑さを避ける朝夕2部制を拡大する。今月沖縄県で開く全国中学校体育大会も開始時間を遅らせる。各競技で選手を守る万全の対応をしてほしい。
気候危機を回避するには、各国が協調して温室効果ガスの排出を減らすしかない。日本政府は排出量を「2035年度に13年度比60%減、40年度に同73%減」とし、50年までの実質ゼロを目指している。目標達成のため、実効性のある取り組みを着実に進めねばならない。