9月に入っても暑い日が続いているが、空の色が真夏とはほんの少し違って見える日も増えてきた。モノクロの写真から、今の時期を連想して描いた1971(昭和46)年頃の神戸の街。車両の窓から手を伸ばせば届きそうな場所に木造の建物がたち、洗濯物がヒラヒラしていて今の日本ではちょっとないような光景だ。市電は人々との距離が近くて、暮らしとともに風景を作り出しているところが魅力だと思うけれど、これは少々近すぎるかもしれない。あたりで暮らしていた方々のご苦労を思わずにはいられないが、同時にこの時代の人々の逞(たくま)しさみたいなものを強く感じて、市電時代の風景のなかで特に好きなもののひとつだ。