2021年開業の阪急神戸三宮駅前の神戸三宮阪急ビル。再整備で新しくなった風景第1号だ。見上げると、建設中どこまで伸びるのかと思ったほどの29階建ての高さ。低層階はれんが風の壁に大きな窓、北側は円筒状の独特のデザインの建物で、かつてここにあった神戸阪急ビル東館を踏襲している。最新スポットでありながらレトロな風景なのだ。
ぼくはこの場所を時代を変えて描いていて、今作を合わせて4作品になった。一つ目は神戸阪急ビル東館がオープンした1936(昭和11)年。同ビルは阪急電車の前身阪神急行電鉄が三宮に乗り入れてできたターミナルビルで、当初駅名は「神戸駅」だった。ヨーロッパ風のモダンな建物で、なんといってもビルを貫くアーチ型のトンネル状の所から、電車が出入りするという独特の構造に惹(ひ)かれる。二つ目は神戸駅だった最後の年、68(昭和43)年。記憶にあるのはこの頃からで、繁華街の中心となり、周囲は車や人で溢(あふ)れ、鉄橋の下を市電が大きな音を立ててくぐっていた。