1992年に「ウィメンズネット・こうべ」を立ち上げ、女性問題に取り組み始めて34年になります。95年の阪神・淡路大震災を契機に、特にDV(ドメスティックバイオレンス)に悩む女性や母子の支援に関わるようになりました。
各地でDV防止セミナーや、「災害と女性」をテーマに講演なども行っています。「既婚女性の4人に1人がDVを経験し、そのうち6人に1人は命の危険を感じるほどの暴力を受けているが、家を出る人は5人に1人しかいない」(内閣府の2024年の調査から)と講演会で話すと、「そんなにたくさん」「DVが児童虐待になるなんて」など、感想が多数寄せられます。「大事な問題。自分にも何かできることがないか考えてみたい」とうれしい感想もあります。
04年からはDV被害女性や母子のためのシェルターを運営し、これまでに約500世帯の支援をしてきました。
忘れられないある出会いがあります。長年の夫の暴力から離れる決心をした女性が、2人の子どもと家を出てこられました。ところが小学5年のお兄ちゃんが「俺、絶対に転校せえへんからな! 俺は家に帰るぞ!」と言って譲りません。一方、小2の弟は「僕はお母ちゃんと一緒がいい! 家には帰らない!」。すると、お兄ちゃんが弟をたたいたのです。
数日後、お母さんは「長男がどうしても帰ると言うので、諦めて自宅に戻ります」と言います。その日、スタッフが部屋の掃除に行くと、お兄ちゃんが一人でポツンといたそうです。「大変やったね。これまでよう頑張った。えらかったね」と声をかけると、お兄ちゃんは号泣し、しばらく泣きやまなかったのです。その後、彼は「家へ帰るぞ!」とは言わなくなり、母、弟と一緒に引っ越していきました。
幼い子どもでも傷つくし、悲しみも怒りもあります。彼は初めて、自分の気持ちをねぎらってくれる大人に出会えて、まだ幼いだけに、怒りも静まったのかもしれないと思いました。
この経験はとても大切な学びとなりました。これまでは母親のケアが主で、子どもは保育や学習支援と限定的でしたが、「これからは、母親とは別に、子どもの気持ちを聞く時間を持とう」と決めました。
今回、この連載を読んでくださる方の中から、DVについて理解し、傷ついている子どもに寄り添ってくれる大人が、たとえ一人でも増えたらうれしいなと思っています。
(まさい・れいこ=「女性と子ども支援センター ウィメンズネット・こうべ」代表理事)
【まさい・れいこ】1949年兵庫県尼崎市生まれ。神戸大学を卒業後、72年日本航空入社。退社後、92年に「ウィメンズネット・こうべ」を設立、94年には「女たちの家」を開設。阪神・淡路大震災後はDV被害を受ける被災女性や子どもの支援に奔走。2024年、シングルマザーらの自立を支援する「ウィメンズハウス」を開設。女性の人権擁護と男女平等社会の実現を目指して活動を続ける。























