チャイムが鳴ると、教室のモニターに映された新聞記事を指しながら、1人の生徒が解説を始めました。それを聞き、何やらタブレットに打ち込む生徒たち。
班での話し合いでは、本題からずれた意見を言ったり、言葉に詰まったりする生徒がいても、辛抱強く真剣に互いの意見を聞きます。先生は要所要所でポイントを指示するだけで、生徒たちが授業を進めていきます。
うらやましいぞ。どうやったらこんな教室の空気ができるのだ? 長年、高校の国語教師をしていた私は西宮市立浜脇中学校の授業を見ながら考えました。
教師は、クラスの雰囲気づくりのため、仕掛けを試みます。朝の読書を取り入れると落ち着いた空気になり、合唱を組み込むと和気あいあいとした空気になるというふうに。その仕掛けとして、浜脇は学校を挙げ、教育に新聞を活用するNIE(エヌ・アイ・イー=NewspaperinEducation)活動を行っています。
民主的で主体的な空気が生まれたのは、第一に先生の努力ですが、新聞に親しんだ生徒たちが、他の人や社会、自然環境のことを、自分ごととして考えるようになったという要因もあるでしょう。新聞は理想的な教室の空気をつくる力を持っていると思います。
(NIE・NIB推進部顧問 吉田尚美)
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来年7月31日、8月1日、神戸でNIE全国大会が開催されます。このコラムでは、新聞を活用して学びを深める方法を伝えていきます。
【よしだ・なおみ】兵庫県稲美町出身。県内の公立高校国語教諭、県教育委員会指導主事、播磨南高校長、三木北高校長などを経て現職。