元保護猫の茶トラの男の子「ちゃと」くん、黒猫の「てんてん」くんと暮らしているのは、Xユーザー・ハミィさん(@tomo1215kei)。その出会いは、先住猫「すず」ちゃんとのご縁なくしては語れないものでした。血のつながりを超えた“家族の絆”が育まれた軌跡とはー。
■猫が苦手だった夫が惹かれた、先住猫との出会い
今から7年前、飼い主さん一家は、1匹の保護猫すずちゃんと暮らしていました。
「もともと夫は猫が苦手だったんです。でも私が猫好きなので、頑張って猫カフェに付き合ってくれて。最初はおっかなびっくりでしたが、地域猫とのふれあいを重ねるうちに、少しずつ心を開いていきました」
ある日、近所の地域猫が集まる場所で、ふと目にした猫との出会いによって、暮らしが一変しました。
「ぽつんとひとりでぼっちで佇む子がいてーそれが、すずでした。不思議と惹かれるものを感じたんです。なんとか保護しました」
すずちゃんは、ケージの中ではそわそわして落ち着かない様子だったそう。見かねた飼い主さんは、試しにケージから出してみることに。すると、すぐ静かに過ごし始めました。すずちゃんは、自由を愛するタイプだったようです。
「寝室の暖かい場所で寝てほしいのに、わざわざ寒い部屋で寝たり、暑い日には暑い部屋で寝ていたり…(笑)。気分屋なところも、また愛おしかったですね」
飼い主さんの夫を“猫好き”に変えたすずちゃん。それがきっかけで、2023年4月には茶トラの男の子ちゃとくんが家族に加わりました。
すずくん、ちゃとくんはすっかり家族の一員に。のびのびと穏やかな日々を過ごしていました。
ところが、数年後、すずちゃんが病に冒されていることが発覚します。飼い主さん家族は懸命にケアを続けました。
そうして2024年9月、すずちゃんは6歳で虹の橋を渡ったのです。
「すずは、甘えるタイプではありませんでしたが、とても優しい子でした。私が体調を崩して寝込んだとき、いつもそばにいてくれたんです。一生忘れません。すずを連れて車に乗ったときのこと、今もよく思い出します」
■“猫との暮らし”が、家族の悲しみを癒やした
ちゃとくんは、お迎え当時、5歳。地域猫がよく集まる牛小屋に、ある日、ふらりと現れました。
「毛並みがとてもきれいだったので、飼い猫だったのかもしれません。ほかの猫たちとうまく馴染めず、いつもひとりぼっちでした」
その牛小屋が取り壊されることに。ちゃとくんは、居場所を失ってしまいました。飼い主さんは、迷わず、ちゃとくんを保護。
すずちゃん亡きあと、飼い主さん家族に寄り添ってくれたのが、ちゃとくんだったのです。
そして2025年1月。再び、新たな出会いが訪れました。飼い主さんが借りている畑に、突然、黒猫のてんてんくんが現れたのです。
「最初はシャーシャー威嚇していましたが、慣れてくるとお腹を出してゴロンとするように。近くに他の猫はいなかったし、これもまた何かのご縁だと思いました」
てんてんくんを迎えて3週間ほど経つと、先住のちゃとくんとはすっかり打ち解け、お腹を見せて寝転がるほど仲良くなりました。てんてんくんの天真爛漫な様子を、微笑ましく見守る飼い主さん家族。
すずちゃんとともに過ごした愛あふれる日々、その思い出を胸に刻みながら、ちゃとくんと、てんてんくん、そして飼い主家族は手を取り合って過ごすようになったのです。
■“ケージが苦手”な子たちとの、暮らしの試行錯誤
ちゃとくんとてんてんくんを迎えたときの様子について、飼い主さんはこう振り返ります。
「ちゃとはケージ生活にどうしてもなじめず、中を荒らしてしまう日々が続きました」
ケージの外に出すと落ち着いたものの、今度はトイレの失敗が目立つようになったといいます。
「ヒノキの砂では何度か粗相をしていたのですが、鉱物系の砂に変えた途端、ぴたりと止まったんです。こんなに違うのかと驚きました」
一方、てんてんくんは初日から堂々とした姿を見せ、トイレの失敗も一切なし。
「ちゃとのトイレで堂々とオシッコして(笑)。お迎え直後からそばを離れず、ゴロンと甘えてくれました。夜鳴きは何日か続きましたが、ケージの扉を開けたまま部屋のドアだけ閉めておいたら落ち着いてくれて、ホッとしました」
■本当の兄弟のようになったふたり-すずちゃんとの思い出を胸に
現在、ちゃとくんは7歳、てんてんくんは2歳。性格も出会いのタイミングも異なりますが、ふたりの間には不思議な“兄弟のような関係”が育まれています。
「ちゃとがひとりだったころは、『かまえ!かまえ!』と子どもみたいに甘えていました。でも、てんてんが来てからは気にかけるようになって、お兄ちゃんのように接するように。毎日ふたりでくっついて眠る姿を見ると、本当に兄弟みたいだなって思います」
そんなちゃとくんには、ときおり、すずちゃんの面影を感じる瞬間があるといいます。
「すずがよく乗っていた窓に、今まで一度も乗らなかったちゃとが、突然ひょいっと乗っていて…。思わず夫と顔を見合わせて驚きました。仕事机の上も同じで、生前すずがよくいた場所に、ちゃとが自然と向かっていくことがあって。まるで、すずがそっと導いているようでした」
すずちゃんは空へ旅立ちましたが、今も日々の暮らしのなかで、形を変えて寄り添ってくれている-そんなふうに感じられるそうです。
「すずにしてあげられなかったこと、すずから教えてもらったことを、ちゃととてんてんとの暮らしに活かしていきたいです。『一緒に長生きしようね』-ふたりにも、そう伝えています」
(まいどなニュース特約・梨木 香奈)