今から3年前、元保護猫の男の子「てまり」くんは、Instagramユーザー・てまり らふ ビスコさん(@t.r285)の愛犬によって発見されました。種族を超えた命のリレーが、小さな子猫を救ったのです。
2022年7月18日、愛犬「らふ」ちゃんの夜散歩中、突然、らふちゃんの足が止まりました。
「道路沿いの植え込みをのぞいていて、『行くよ』とリードを引っ張っても頑なに動かなくなったんです。不思議に思ってそばに行くと、ケガをして動けなくなった子猫、てまりを見つけました」
飼い主さんは、一度自宅に戻って子猫を保護する準備を始めました。段ボール箱とタオルとお水を手に取り、コンビニに立ち寄ってキャットフードと軍手を購入し、子猫のもとへ。
「かなり衰弱していて食欲もない様子でした。私は軍手をして保護しようとしましたが、よろめきながらも逃げ回って一筋縄ではいかず…。ふと、タオルで覆ってみるといいのではないかと思いつき、試したところ、ようやく捕まえて段ボール箱に入れることができました」
■足切断の危機に直面した子猫
てまりくんは当時、生後推定3~4カ月。体重はわずか740gほどしかなかったといいます。
「ガリガリに痩せていて、結膜炎や敗血症、低体温、さらに真菌までいろいろと抱えていました。顔にも小さな傷があり、『これは本当に猫なのだろうか』と思うほどボロボロの状態だったのを今も鮮明に覚えています」
てまりくんとの出会いは、まさに運命的なタイミングで訪れたのだと飼い主さんはいいます。
「『いつか猫ちゃんとも暮らしてみたい』という気持ちもありましたが、らふとビスコ、2匹の犬がいるので思いとどまっていたんです。もし道すがら捨てられた子猫と出会うようなご縁があったときにはお迎えしようと想像していました。すると、その3カ月後、てまりとの出会いが訪れたんです」
てまりくんの健康状態は想像以上に深刻でした。そんななか、飼い主さんが里親を探さず、てまりくんを迎え入れることを決めたのには理由がありました。
「病院で足を複雑骨折していることがわかり、一時は切断の可能性もありましたが、奇跡的に回避できました。てまりの生きようとする姿に心を揺さぶられ、我が家に迎えることを決めたのです」
■子猫を喜んで迎え入れた愛犬たちーー新たな生活の始まり
5週間の入院生活を経て、てまりくんは飼い主さんの家へ。幸い、らふちゃんとビスコちゃんはてまりくんを快く迎え入れてくれました。一方、てまりくんは緊張し、不安げな様子だったといいます。
「病院のクレートごと連れて帰りましたが、微動だにせず固まっていました。そこで猫用のケージを用意して、上から大判のタオルをかけてパーソナルスペースを確保。生活音や犬たちに慣れてもらえるように工夫しました」
てまりくんは入院生活中、犬の鳴き声には慣れていたため、怖がることはなかったそうです。
「らふとビスコは毎日ケージをのぞき、てまりの様子を見守っていました。ケージの扉を開放すると、てまりのそばへ。一緒にトイレに入るなど距離を縮めていました」
てまりくんは家で過ごし始めて2週間くらいはケージから一歩も出ようとしませんでした。そんなてまりくんを急かすことなく、飼い主さんやらふちゃん、ビスコちゃんはそっと寄り添いました。
すると少しずつ変化が現れてーー
「しばらくして、夜中、誰もいないときにケージから出て遊ぶようになりました。それだけでも十分嬉しかったのですが、しつけをしなくてもちゃんとトイレを使ってくれることにびっくり。また、らふとビスコと想像以上に仲良くなったことも嬉しい驚きでした」
もちろん困ったこともありましたが、SNSのフォロワーさんたちに助けられたといいます。
「たまに布団に粗相をするようになったんです。その原因がわからず、さらにニオイがきつくて困り果ててしまいました。そんなとき、フォロワーさんから『トイレのタイプと猫砂を変えてみるとよい』と教えてもらい、試してみたところ、無事に解決。本当にありがたかったです」
■猫の魅力にメロメロに! ママ代わりになった愛犬たち
紆余曲折を経ながらも、てまりくんは家での暮らしに慣れていきました。
「うちに来て3週間ほど経ったころには、リビングに人間やわんこがいてもケージから出てくるようになりました。そしてすぐにビスコと追いかけっこをスタート。それからは毎日追いかけっこをして遊び、3匹そろってソファでくつろぐようになりました」
てまりくんを迎えてから、飼い主さんは猫の魅力にどっぷりとはまったといいます。
「らふもビスコもてまりのことが大好き。とくにビスコは笑っちゃうくらい大袈裟にお世話をするんです。傷があれば舐めるし、お口を舐めるのも好きで、てまりもそれを受け入れて舐められています(笑)。『こんなわんこはなかなかいないし、それを受け入れるにゃんこもなかなかいない』と言われることも。とても心癒やされます。てまりを迎え入れて本当に良かったと思いました」
■「本当に運命だった」てまりくんと歩んだ3年を振り返って
てまりくんは現在3歳。おしゃべり上手で、よく飼い主さんに話しかけてくれるそうです。
「私の用事が一段落しそうになると、ニャーと鳴いて『お尻トントンして』『撫でて』とアピールします。とても穏やかで優しい子です。お迎えしてから、てまりがシャーッと威嚇したのは、まだケージに閉じこもっていたとき、ビスコが近寄ったときだけ。それも控えめなシャーでした」
ビスコちゃんから「遊ぼうよ」とぐいぐい誘われても動じず、猫パンチを繰り出すこともなく、すべてを受け入れているといいます。
「てまりと出会ったときは後先考えず、『今すぐ助けないと命が危ない』という思いに駆られて保護しました。咄嗟の判断だったとはいえ、行動に出ることができたのはご縁があったからーー。わんこたちとの相性もよく、本当に運命だったのだと思います」
今、飼い主さんがてまりくんに伝えたいメッセージとはーー
「あのとき、体中、痛くて怖かったよね。それでも生きてくれた。らふとビスコを受け入れて、毎日たくさんお話してくれて、かわいらしい姿を見せてくれるてまり。うちを選んでくれて、本当にありがとう」
(まいどなニュース特約・梨木 香奈)