SNS担当に就任!!
SNS担当に就任!!

写真やつぶやきから“行きたい”が生まれる昨今、飲食店にとってSNSはまさに新しい看板です。

大手チェーンはもちろん、家族経営の小さな店でも、X(旧Twitter)やInstagramを通じてお客さんとつながることが、集客に直結する時代となりました。しかし、その一方で「炎上」というリスクも隣り合わせです。都内で実家の飲食店を手伝うOさんも、まさにその“光と影”を体験したひとりでした。

■最初は軽い冗談から始まった

OさんがSNS担当を買って出たのは、両親が切り盛りする飲食店を少しでも盛り上げたいという思いからでした。

「お客さんに楽しんでもらえたら」と、冗談を交えた投稿やコメントへのユーモラスな返信を続けるうちに、少しずつフォロワーが増えていきました。やがて他店のアカウントとも絡むようになり、そのやり取りが拡散されると、一気に注目を浴びるようになったといいます。

「一度“バズる”と、思った以上に快感なんです。数字がどんどん伸びて、自分の発信を待っている人がいるような錯覚に陥りました」とOさんは振り返ります。

■調子に乗った結果…予想外の落とし穴

フォロワーが増えるほど、Oさんは発信に力が入りました。最初は店や料理の話題が中心でしたが、やがて社会問題や政治に言及するようになります。それらの投稿にも多くの「いいね」が付き、気分はますます高揚していきました。

しかしある日、フォロワーの一人から批判的なコメントが寄せられます。Oさんは冷静さを欠き、いわゆる「レスバトル」に発展。相手も引かず、互いに感情的なやり取りを繰り広げてしまいました。その様子がスクリーンショットで拡散され、瞬く間に大炎上へ。

「SNS担当を変えろ」「飲食店の顔として不適格だ」--心ない言葉が並び、謝罪文を出しても火に油を注ぐばかり。騒ぎが沈静化するまで長い時間を要しました。

■妹へのバトンタッチで再生へ

現在、店のSNSはOさんの妹が担当しています。冷静で淡々とした彼女の投稿は、派手さはないものの安定感があり、フォロワーからの信頼も徐々に戻ってきているそうです。Oさんは「自分には向いていなかった」と潔く認め、裏方としてサポートに回っています。

「僕はお調子者で、すぐ熱くなってしまう。SNSは瞬発力だけじゃなく、冷静さが必要なんだと痛感しました」と語る姿には、どこか安堵の表情も見えました。

■SNSとどう向き合うべきか

今回の経験は、飲食店に限らず、多くの事業者が直面する課題を映し出しています。SNSは強力な宣伝ツールである一方で、発信者の性格や感情が思わぬ方向に作用すれば、店の信用を大きく損なうリスクも伴います。

では、実際にユーザーは企業のSNSにどんな目線を持っているのでしょうか。街の声に耳を傾けてみました。

・「企業アカウントの“いいね”欄を見てみたら、グラビアアイドルの際どい投稿に反応していて…。迂闊というか、意外とそういうところ、見られてますよね。」

・「『仕入れすぎちゃいました!助けてください!』って投稿を見て、最初は気の毒だなあと思ったんです。でも数カ月後、また別の商品で同じことを言っていて…わざとじゃないかもしれないけど、ちょっと味を占めたのかな?って思いました(笑)。」

・「飲食店アカウントなのに、絶望的にご飯の写真が美味しそうじゃない! 撮影の仕方ひとつでだいぶ変わるのに…投稿文もなんだかぶっきらぼうで距離を感じるし、もう少し上手くやれないかな?なんて、勝手に心配しちゃったり…。」

・「企業アカウントは自我を出しすぎないのが成功の鍵。アカウントの向こうに個人が透けて見えると、共感性羞恥でいたたまれなくなる。」

厳しい意見も多いですが、こうした声からも分かるように、SNSには“見られている意識”と“距離感の取り方”が欠かせません。Oさんのように「合う人」と「合わない人」がいるのは当然です。大切なのは、無理に一人で抱え込まず役割を分担すること。そして、たとえ失敗しても軌道修正できるという柔軟さなのかもしれません。

炎上の苦い記憶は簡単に消えません。しかしそれも含めて、店と家族が歩んだ一つの経験です。Oさんは「今は妹に任せて正解でした。僕は裏方で支えられることにやりがいを感じています」と語りました。炎上も成功もくぐり抜けたOさんの言葉には、ちょっとした苦みと同時に、“一度やらかした者の強さ”が漂っていました。

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◆はいどろ漫画 日常の事件や、身近なスカッと話をお届け!【はいどろ漫画】のInstagramで連載漫画を描いてます。