「16歳で高校中退した元ギャル」という過去を経て、今では女性の自立と働くママを支援する教育事業を展開する一人の女性のエピソードがInstagramに投稿され、話題を集めています。投稿したのは、現在37歳で、7校のネイルスクールを展開する経営者の北尾優さん(@yuu_kitao)。ギャル時代の写真から一転、スーツ姿で笑顔を見せる現在の姿に「生き方が外面にも現れていますね」「すごい努力家、、感動しました」など、称賛の声が寄せられました。
「生きるために仕事をしていました」
そう語る北尾さんの10代は、まさに「どん底」。高校を中退し、ギャルとして日々を過ごしながらも、そのやんちゃな見た目の裏では、将来への漠然とした不安と葛藤を常に抱えていたといいます。
そんな彼女の人生を大きく動かしたのは、一冊の本との出会いでした。
「『夢をかなえるゾウ』という本です。本当にやりたかったこと、やってみたかったこと、なりたい理想の自分があったはずなのに、自信のなさから自分の夢に蓋をしていた事に気づかされて本の主人公とリンクしました。このまま何もせず、歳をとる事にゾッとしたのを覚えています」
学歴もコネもお金もない。しかし「このままでは終われない」という強い思いが、北尾さんを新たな道へと突き動かしたといいます。
“なりたい自分”に近づくための最初の一歩は、ネイリストになることでした。勇気を出してネイルサロンに就職したものの、心が折れてすぐに退社。その後は仕事を転々としながら、友人たちに無償で、あるいは材料費のみでネイルを行っていたそう。
「自信がなかったので申し訳ない気持ちでネイルをしていたのですが、『また来月もお願いしたい』と言ってもらえたことが本当に嬉しかったんです」
友人から感謝の言葉をもらったことが、初めて「誰かに必要とされる喜び」を知った瞬間だったといいます。
24歳で自宅サロンを開業すると、そこからの北尾さんの努力は凄まじいものでした。SNSよりもブログが主流だった時代、アクセス数を増やすために空き時間のすべてをブログに注ぎ込んだそう。1日に3記事を投稿し、他のブログにコメントを残して交流を増やす作業を、毎日6時間以上続けました。その地道な努力が実を結び、ブログはランキング上位に。開業からわずか1年半で、自身のサロンを「予約の取れないサロン」へと成長させたのです。
順風満帆に見えたネイリストとしてのキャリア。しかし、子どもを出産したことで、新たな壁に直面します。
「子どもの急な発熱などで予約をお断りしないといけなくなり、これが一度ならず二度も続けば信用問題になりかねない…。お客様を減らすしかありませんでした」
「なんて女性が働きにくい世の中なんだ」と、接客業と子育ての両立の難しさを痛感したこの経験が、北尾さんの新たな使命感に火をつけました。
「ママになっても好きなことを仕事にできる証明がしたかった 」
その思いから、在宅でも仕事ができる物販EC事業へと大きく舵を切ります。そして29歳の時、「女性が『お金のためだけじゃなく、好きなことを仕事にできる』会社をつくりたい」という信念のもと、自らの会社を設立しました。
物販事業を通して、ママたちが安心して働ける環境づくりに7年間尽力。しかし北尾さんは、さらに大きな視点で女性を支援したいと考えるようになります。
「ネイルサロンでは一人のお客様を幸せにできますが、教育を通じれば一人の生徒さんが何百人ものお客様を幸せにできる。その連鎖が未来へ広がるんです 」
「より多くの女性に、根本的な自立とやりがいを提供したい」という思いから、物販事業に区切りをつけ、今度は美容と教育の分野に全力を注ぐことを決意。こうして、今では7校のネイルスクールを展開する女社長となったのです。
現在は、全国で起業セミナーを開催するなど、講師がやりがいを持ち続けられる環境づくりを目指して活動中。「誇れる過去ではない」と、最近までその経歴を伏せていたという北尾さん。しかし、過去を公開したことで、「『別世界の人じゃないと感じた』『もう一度頑張ってみようと思えた』という声をたくさんいただくようになりました」と語ります。
「自身の歩んできた道が“誰かの励み”になる」と確信したという、北尾さん。過去の自分のように迷える女性たちに、力強いメッセージを送ります。
「『あの時やっておけばよかった』と後悔するより、『挑戦してみてダメなら諦めよう!』と思うことが大切。お金も才能もなかった私ですが、好きなことに少しの勇気を持って踏み出したことで人生は大きく変わりました」