ちょうだ~い!
ちょうだ~い!

子どもを通じて親しくなるママ友との関係。日常のやり取りの中で生まれるささやかな距離感には、意外な複雑さがあります。親交が深まるほど、ちょっとした不快感や緊張感を覚えることもあるのではないでしょうか。

■子どものお下がりと化粧品、「くれくれ」の連鎖

埼玉県在住のOさん(50代)は、高校生の息子のクラスメイトの母親と、学校行事の係活動をきっかけに親しくなりました。仕事を通して少しずつ仲を深め、やがてLINEでもやり取りをするようになりました。ところが、やり取りの中で次第に気になる点が増えていったといいます。

ある日、Oさんが「うちの子、急に成長して去年の服が着られなくなった」と話したところ、そのママ友から「じゃあ、その服もらっていい?」と返されました。あげること自体は構わないものの、お願いされる形の「くれくれ発言」には少し引いてしまったそうです。同級生からお下がりをもらうことについて、もらう側の子どもの気持ちを考えると複雑な思いが残りました。

さらに、美容の話題でも似たような場面がありました。Oさんは節約のため、自宅で使えるトリートメントタイプの白髪染めを試してみたところ、思った以上に地毛より黒くなってしまったそうです。その話をすると、「じゃあ、それ使わないなら、ちょうだい」と再び“くれくれ”のリクエスト。周りのママが「別の色を混ぜたら?」とフォローしてくれたものの、Oさんはまた少し疲れを感じました。

■子どもが部活を休んだだけで…

別の日、Oさんが「子どもが足を痛めて部活を休んでいる。整体に行かせようと考えている」と話したところ、ママ友は「どこの整体院?なんていう病気?」と立て続けに質問してきました。

Oさんとママ友は住んでいる地域も異なるため、まだ行ってもいない整体院の名前を聞かれても、どう答えるべきか戸惑いました。過剰な関心に、Oさんは、自分の生活圏に踏み込まれるような感覚を覚えたといいます。

白髪染めの話題が再び出たときも、行きつけの美容室について「どこのお店?担当はカリスマなの?なんて名前?」と、細かく尋ねられました。決して悪気はないのかもしれませんが、相手の関心が自分のプライベートにまで及ぶと、息苦しさを感じてしまう瞬間があります。

■気持ちの折り合いと距離感の工夫

不要なものを譲ること自体に問題はなくても、リクエストの仕方や関心の深さ次第で、不快感が積み重なっていくことがあります。相手の質問や態度が自分の領域を越えてくるとき、人は無意識のうちに距離を取りたくなるものです。

ママ友との関係は、子どもの学校生活において心強い支えになりますが、親しさが増すほど、互いの境界を意識することが大切です。相手への思いやりと自分の安心のバランスを保つことが、心地よい関係を続けるための鍵になります。

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あなたの周りには“くれくれ星人”はいませんか?

▽栃木県・40代
家族で関西に行ったという話をしたら「お土産は?余ってたら欲しい」と言われました。買ってきて渡すならまだしも、余り物を狙われるのは複雑な気持ちです。

▽神奈川県・50代
中学のクラスメイトの子が宿題のテキストを学校に忘れて来たということで、そのママから問題を写メして送って欲しいといわれ、30ページぐらいあるのに見えるように写メして送って、ものすごく時間がかかって大変でした。

▽東京都・40代
うちの子どもが、友達が忘れ物をしたからと予備の文房具を貸したのに、返却されないままそのママ友から「助かった、ありがとう」とお礼のラインが届いたのですが、感謝より「返してほしい」が先に立ちました。

▽埼玉県・30代
PTAの役員をしていて、学校の行事で作った装飾品を「それ、下の子の幼稚園行事で使いたいから、もう使わないならちょうだい」と言われました。材料費も手間もこちらが負担したのに、軽く言われてモヤモヤしました。

(まいどなニュース特約・松波 穂乃圭)