部下のモチベーションを下げる上司の言動は… ※画像はイメージです(pain au chocolat/stock.adobe.com)
部下のモチベーションを下げる上司の言動は… ※画像はイメージです(pain au chocolat/stock.adobe.com)

株式会社スコラ・コンサルト(東京都品川区)は、このほど、部下のモチベーションを下げないための「上司に向けたコミュニケーションチェックリスト」を公開しました。

本チェックリストは、同社が実施した累計15万回を超えるオフサイトミーティング®において、多くの会社でよく見られた、部下のモチベーションを下げる上司のコミュニケーションの失敗パターンの中から一般的な11の失敗パターンを抽出したといいます。

【上司が部下のモチベーションを下げないためのチェックリスト】

【チェックの数による評価】

・1個以下:世代や立場のちがう部下とのコミュニケーションも良好な可能性大
・2~3個:あなたとのコミュニケーションにモヤモヤしたものを感じている部下がいる可能性あり
・4~5個:部下との間にだいぶ溝ができている可能性大
・6個以上:自分が若手だった頃と、今の部下が違うという認識を持ち、部下とのコミュニケーションの仕方を根本的に見直す必要あり

【同社のプロセスデザイナー若山修氏による各チェックリストの解説】

(1)「俺は聞いていない」
暗に報告を怠ったと部下を責める気持ちがあります。しかし、何もかもを報告することは不可能で効率的ではありません。何を報告し、何を報告しなくていいか、そこを「察しなさい」というのは無理なことです。また、「上司が把握するためだけ」の報告をさせられ、上司から何のフィードバックもなければ、部下にとっては苦痛でしかありません。

(2)「価値観を押し付けてはいけないけど…」と言いながら、古い価値観を語る
そうは言いながら、価値観を部下に押し付けたい気持ちがあることの表れです。押し付けないまでも、自分(上司)の考えのほうが正しいという気持ちが背景にあります。この言われ方をすると、部下や若手は反論しにくく、ただ聞くだけになり、「自分を理解してもらうことが難しい」と感じがちです。

(3)「昔は(パワハラが)当たり前だった」
厳しく理不尽な接し方をされてきた世代は「パワハラの中から学んできた」という、ある種の成功体験があります。しかし、その陰でけっこうたくさんの人が病んで潰されてきた事実や、また当時は夜遅くまで一緒に働き、つらいこともうれしいことも共にする時間が圧倒的に長かったという事実を考慮に入れていません。若手の部下にとっては「そう言われても…」以外に思いようがありません。

(4)「気持ちなんてどうでもいい」
この発言をする上司の背景には「くよくよと悩むよりも、仕事の成果や目標に向かって突き進むほうが楽だ」と教えてあげたい、という親心があることが多いです。その通りかもしれませんが、「部下の気持ちがどうでもいい」ということはありません。
「そう思うあなたの気持ちはとても大事だけど、全体像を理解できていないことがあるんじゃないか。今月は成果や目標に集中してみて、その後で振り返ってみてはどうかな。」と伝えるなど、部下の気持ちを軽視しない発言が求められます。

(5)「最後は君の気持ち次第だ」
上のケースと反対の言葉ですが、説明がめんどうになると、最後は「気持ちの問題だ」と押し切る上司も散見されます。そう言われた部下は、「だったら、最初から相談なんていらないじゃないか」と、それまでの対話を台無しにされたと感じます。

(6)「(感謝や褒め言葉は)言わずとも伝わるだろう」
言葉としてのコミュニケーションではなく、「きっと言わなくてもわかってくれるはずだ」という思い込み(もしくは一方的な期待)によって、思っていることを口にしない上司が散見されます。
たとえば、「ありがとう」「助かった」「いいチャレンジでしたね」「がんばっていることはよくわかっているよ」など。言えばいいのに、「そんなこと、いちいち言わなくてもわかるだろう」という、出し惜しみがとても多いのです。このような対応をされると、「期待されているのかわからない」と言葉にしないまま、退職者が増えてしまいます。

(7)「あなた自身はどうしたいのか?」
めんどうだからではなく、人材育成の一環で「自分で考えさせる」という方針にのっとって、まずはこの問いを投げるというマネジメントもしばしば見受けられます。しかし、このオープン・クエスチョンは自分の仕事ぶりに自信のない段階では危険です。答えが出せないことに追い詰められ、ますます自信をなくしてしまうことがあります。

(8)「自己責任で動いてくれていい」
「あなた自身はどうしたいのか?」とセットで出てくることが多いのが「自己責任論」です。若手を尊重し、その意思を大事にしているつもりでも、部下にとっては、上司側の責任放棄に聞こえてしまいます。部下は、「じゃあ、あなた(上司)の責任は?」と思っても、口に出しません。

(9)(辞める理由は)「本音は給料の問題だろう?」
退職希望の社員にも最後まで面談などを通して向き合い続ける、人情派の上司から良く聞かれるセリフです。「自分は一生懸命に離職者の話を聞いてきたはずだ。しかし、離職者は本当のことは言ってくれないもの。言いはしないが、やっぱり最後は給料が転職の理由だろう。」という本音から出てくるセリフ。しかし、そう思っている上司に、部下は本当の退職理由を言う気にはなれないのです。

(10)「報連相をしっかりしろ」
レベルの高いマネジメントをしている上司や、多数の部下から信頼されている上司からも、よく聞く言葉です。報連相はたしかに仕事の基本です。しかし、部下から報連相をしっかり受けている上司は、このようなセリフをほとんど口にしません。
このセリフを口にする上司は、自分と相性のいい部下とのコミュニケーション頻度が高いことが多く、コミュニケーション頻度が低い部下とのギャップがあることが多いのです。それを部下のせいにして「報連相をしっかりしろ」と言っている上司が散見されます。

(11)「どんなことでもいつでもいいから相談に来なさい」
部下に理解のある、一見良さそうな上司から出てきそうなセリフです。そこまでまずい言葉ではありませんが、この言葉は特に新入社員など経験の浅い社員には機能しにくいのです。まず「なんでも」というのは、何についてわからないかがわからないから難しい。「いつでも」は、いつ見ても忙しそうな上司に対して「いつでも」いいとは思えません。
「相談」するためには「論点」がはっきりしないといけませんが、論点をまとめるのは、業務理解と高度な思考が必要です。「来なさい」は、「行ける」なら話は簡単ですが、そもそも経験の浅い新入社員にとっては話に行くこと自体に高いハードルを感じることも多いのです。かくして、新入社員は自分が何に困っているのかも明確ではないまま、いつしか心が乾いていってしまいます。

本チェックリストを監修した同氏は、「長々と言って聞かせるのではなく、部下の話に耳を傾けることで見えてくるものがあるはずです。ミーティング実施前に本チェックを行うことで『安心して話し合える状態』の基礎が固まり、よりスムーズな進行が可能となります」とコメントしています。