マンチカンの「笑(わら)」(左上)、スコティッシュフォールドの「きなこ」(中上)、キジトラの「あんず」(右上)、ラグドールの「ゆふ」(右下)、猫カフェ内の様子(左下)
マンチカンの「笑(わら)」(左上)、スコティッシュフォールドの「きなこ」(中上)、キジトラの「あんず」(右上)、ラグドールの「ゆふ」(右下)、猫カフェ内の様子(左下)

大分県由布市湯布院町にある「ゆふいん 笑(わら)ねこの宿」は、猫カフェが併設された小さな温泉宿(全5部屋)。田舎の実家に帰ってきたかのようなアットホームな雰囲気で、部屋からは雄大な由布岳を望むことができ、肌にやさしい弱アルカリ性の単純温泉の湯も自慢だ。

オーナーの安部信幸さん、ゆりさん夫婦は、お客さん一人ひとりに心のこもったおもてなしを提供。一度宿泊すると「また訪れたい」というお客さんは多い。安部さん夫婦に、旅館のことや猫たちのことなどについて聞いた。

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信幸さん 私たちは2人とも元々介護職で、日出町でデイサービス施設を運営していたんです。妻も私も温泉が大好きで、2015年ころ、お世話になった方や利用者の方々が気軽に立ち寄れる温泉施設を作りたいと思い、物件を探したのがこの旅館を始めたきっかけになりました。

ゆりさん 旅館業の経験がなかったので、果たしてやっていけるか不安でした。そこで館内に猫カフェを作り、屋号から食事まで猫に特化した宿にしようと考えたんです。それで、動物取扱業など必要な資格を取得し、2017年から宿の営業を始めました。

ゆりさん 猫たちは館内をうろうろするのではなく、日当たりや見晴らしの一番いい部屋を猫専用部屋にして、そこでいつも快適に過ごしてもらい、お客さんの希望があるときは猫カフェ(笑ねこカフェ)として、その部屋の中でのみ触れ合えるようにしました。おかげで猫たちは自分たちのペースでストレスなく暮らすことができています。猫好きのお客さんは猫たちに癒され、遊んでくれるので猫たちも楽しそうです。

ゆりさん 猫はデイサービス時代に私が飼い始めました。当時、主人は「猫はひっかくし怖い」というイメージがあって苦手だったんですよ。でも最初に家族に迎えた福ちゃんは主人のお腹の上で寝るほどおとなしく、二番目にやってきた幸ちゃんも人なつっこくて。すぐに主人は猫の可愛さや魅力にはまってメロメロになり、私よりも猫好きになってしまいました。

信幸さん 今では猫たちの世話はほぼ私が担当しています(笑)。その後、動物病院で保護されたあんず、友人から小春を譲り受けるなどして、全部で7匹になりました。最年長で店長の福ちゃんをはじめ7匹はみんな女の子で人なつこいです。いま一番人気はきなこちゃん。元々は警戒心強めでしたが、お客さんから愛されるうち、人が大好きになりました。

信幸さん 開業当初は、国内の猫好きさん、韓国など海外からのお客さんなどもやってきて、経営は順調だったんです。ところが2020年からのコロナ禍で宿泊客は激減。経営が苦しくなり、もうやっていけないかもというところまで追い込まれました。

信幸さん だけど、そんなときに私たちを支えてくれたのが、主に国内のリピーターさんたちでした。「猫たちに会いたい」「こんな時だからこそ」と、全国から2カ月に1回とか、大変な時期にもかかわらず、わざわざ泊まりに来て励ましてくださったんです。もしも猫たちがいなかったら訪れてくれなかったかもしれず、猫たちのおかげでコロナ禍をなんとか乗り越えることができたといっても過言ではないと思います。本当に感謝しています。 

ゆりさん 7匹の猫たちは、私たちにとって娘たちであり、戦友といってもいいかもしれません。私たち自身、くじけそうになったとき、猫たちから元気をもらっていましたから。この子たちのことを「七福猫」って呼んでいるんですよ。人を癒して、みんなを幸せにしてくれる。ここの神様みたいな感じです(笑)

信幸さん お客さんは、猫に癒され、温泉に入り、由布岳を眺め、美味しい料理を食べると、どんどん緩んでいかれますね。来られたときは気難しそうで全然笑わなかった方が、帰られるときには別人のように明るい笑顔を浮かべ、旅立っていかれることも。そんな姿を見ると、この宿をやっていて本当によかったと私たちも元気をもらえます。喜びって循環するんですよね。これからも幸せなひとときを過ごせる宿でありたいと思っています。

【施設名】「ゆふいん 笑ねこの宿」
【住所】大分県由布市湯布院町川南1607-2

(まいどなニュース特約・西松 宏)